開業医のための労務トラブル対策 07.看護師とのトラブルの実例

今までクリニックで起こった看護師とのトラブルについて実例を挙げながら、どのような教訓を得たかについて説明します。

トラブルとなったスタッフのプライバシーもあるため、匿名かつ細かい点は変えており、あくまでフィクションになることご了承ください。

入職者を辞めさせるお局様

看護師とのトラブル

毎回入職した看護師が辞めてしまう。どうやらお局化した看護師が入職したばかりの看護師に嫌がらせをして、退職に追い込んでいました。お局看護師を注意しても、なかなか辞めてくれませんし、嫌がらせを止めてくれませんでした。

1週間ほどで、すぐに来なくなってしまった新人看護師は、パワハラを告発した内容の手紙ももらったこともあります。従業員の従業員へのパワハラや嫌がらせは、労働問題にかかわる重大事項です。少しくらいのパワハラでは、懲戒処分もできないので、注意が必要です。

結局、10人目くらいで、メンタルの強い看護師を採用することができましたが、長い間とらばーゆに掲載していました。看護師の求人費用だけで、30万円以上余計にかかりました。

3人いた看護師、そして誰も
いなくなった

患者さまから評判も悪く、性格の良くない看護師が入職して、評判が良く、性格の良い看護師2人と険悪な状態になりました。性格の良くない看護師に指導しても、辞めてくれず、結局性格の良い看護師2人が辞めてしまいました。

そこから、地獄が始まりました。性格が悪いので、後任の看護師がなかなか決まらないのです。入職しても辞退の嵐が吹き荒れ、雇用しても辞めてしまうことが続き、ついには、「忙しくて疲れたから月末(10日後)で辞める」と言われてしまいました。

「自分のせいで独りになって忙しいくせに、月末で辞めたら、看護師がいなくなって、患者さまに大きな迷惑がかかるじゃないか」と心の中で叫びましたが、看護師がいなくなって、採血や点滴ができない日が続きました。

致し方ないので、看護師紹介会社に高額な紹介料を2人分180万円ほど支払い、どうにか看護師を確保しましたが、またその2人も半年くらいで辞めてしまったという痛いオチもあります。駄目な看護師1人のせいで、良い看護師2人と180万円を失い、医者にも悪影響でしたし、本当に困りました。

労働基準監督署に立ち入り
検査させると恫喝

当院は退職する際には2ヶ月前に申し出ることになっていますが、その看護師は月末の2週間後に辞めるとのことでした。「契約違反のため、2ヶ月後に退職お願いいたします」とお伝えしても、了承してくれませんでした。

「2週間後に辞めさせてくれないなら、労働基準監督署の立ち入り検査を要求することもできますよ!」という恫喝めいたことも言ってきました。後から聞いた話では、ネットで調べたらそういうフレーズを言うと、経営者はひるむらしいと書いてあったそうです。

その看護師には、必殺技を使って結局2ヶ月後に辞めることになりましたが、労働基準監督署、弁護士などのキーワードを出してきても、ひるんではいけないということです。そのときも法律違反はしていませんでしたが、労働基準監督署の立ち入り検査があっても大丈夫なように法令順守することは大事なことです。これくらいはいいだろうと思っていると指されますよ。

給料の増額の要求を通すために、
セクハラを捏造

「給料を上げてくれないと辞める」と恫喝めいたことを言われて断ったら、「私がセクハラした」と言い出した看護師もいました。

私は「空中ブランコ」というアニメが好きなこともあり、「精神科医が活躍する診療所にいるお色気なナース(ピンク色の白衣で登場します)に似ているね!ピンク色の白衣だし」と言われたことをセクハラと言い出しました。

さすがにその場にいた女性の医療事務スタッフは、「それはセクハラではないでしょう」と突っ込んでいました。どうしても給料を上げて欲しかったのか、でっちあげはいけません。給与を上げるまでなら、なんでもありなのかもしれませんが、部下からのでっちあげのセクハラねつ造は、特に罪には問えません。

当時、若かったからなめられていたのかもしれませんが、主張するのはただですから、なにを言われても圧力に屈してはいけません。冷静に判断しましょう。

辞めると言ったのに
労働基準監督署に駆け込む

「辞めます。次の職場が決まったら、退職する日を伝えます」と、ある看護師が退職の申し出を口頭で伝えてきました。働きも悪かったため、慰留せず、「了解しました」と口頭で了承し、日付も決まってないので書面を取り交わしていませんでした。

早速看護師の募集を開始しましたが、1週間後に「やはり残りたい」と申し出がありました。当然断り、「退職届けを出してください」と多少強引にではありましたが、退職届けのひな形をこちらで作り、印鑑を押してもらいました。

円満に退職したとは思いませんでしたが、問題の看護師だったので、安心していたら、労働基準監督署の関連機関である「あっせん」から、申し立てがあり、「給料2ヶ月分の60万円を払ってください」とのことでした。

結局、労働基準監督署の人に事情を話して説得してもらいました。「あっせん」は素晴らしいシステムで、弁護士を代理人に選任するのとは異なり、無料で紛争解決をしてくれます。

トラブルになったら、従業員に弁護士を雇わせないことです。悪徳の弁護士は、「いっぱいお金を取れます」などとそそのかします。一度弁護士を選任すると最低でも30万円は支払う必要があるため、従業員はお金を投資することになります。

少なくとも100万円以上クリニック側から得られないと納得しないことでしょう。そうなると、紛争は長引きます。揉めてしまったら、弁護士ではなく「あっせん」に駆け込んでもらいましょう。

ネットワークビジネスの勧誘

ネットワークビジネスの勧誘が毎回迷惑しているとの報告がありました。どうやら病院勤務時代の先輩看護師にすすめられてハマってしまったようです。

一度誘われると、ネットワークビジネスというレッテルが貼られてしまい、声かけてくれて親切なのもそのためとか思ってしまいがちです。宗教の勧誘も禁止にするべきでしょう。

診断書を書いた精神科医と
トラブルに

精神科受診をして、「業務負担が重いため」うつ病の診断書を持ってきた看護師がいました。今日付で退職したいとのことでした。「簡単な問診ですぐ診断書を書いてくれた」と本人も驚いていました。

不審に思った私は、本人の許可を得て、精神科の担当医に電話して「どのような点の業務負担が重いのですか?」と尋ねました。すると、担当医は激高して「書面で回答する!」「もう一度言う、書面で回答する!!」と連呼していました。

上司として、従業員の体調や今後の業務負担に関する課題を把握するために、尋ねただけで、「やはりなにかやましいことがあるのだな」と、ピンときました。結局、なにも把握していなかったのでしょう。

8.医師とのトラブルの実例
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