スタッフの急な退職があると、人員不足となり、患者さまを待たせてしまったり、他のスタッフに負担が重くなってしまったり、診療体制が崩れてしまいがちです。
クリニックで仕事をするのが嫌になってしまい、本当はすぐにでも辞めたいのに、契約を守って契約期間まで勤め続けるスタッフもいれば、患者さまも同僚スタッフも困るのが分かっているにもかかわらず、すぐに明日から来なくなるスタッフもいます。
多くの開業医は、すぐ辞めるスタッフに対して、「去る者は追わず」とか格好いい?ことをいって目をつむっていますが、私は、辞める予定の契約を守っているスタッフとの信頼関係を大事にしたいので、明日から来なくなるスタッフに対しても毅然と立ち向かうことにしています。
私もコンビニやカラオケのアルバイトをやっていたこともあったり、バイト先をすぐ辞めたこともあったり、辞めたい人の気持ちはよくわかります。
「朝起きて仕事に行きたくない」「仮病を使ってずる休みしようかな」「あの人の顔を見たくないない」などの感情が出てきます。
起こりやすい離職ドミノとしては、一人辞める→仕事量が増えてしまうので、二人目が辞める→よりきつくなって、三人目が辞めるという悪循環になります。ドミノで医療事務が誰もいなくなって、ピンチになったクリニックも知っています。
ここでは、急に辞められないための予防策と、辞められてしまったときの対策を説明します。
通常、振り込みでも、状況により、スタッフも手渡しになることがわかっていれば、退職する際にトラブルを避けるようになります。契約書や就業規則にも書いておくべきです。時々、退職してから手渡しであることを知るケースもあるので、周知しておくべきです。
当然、2ヶ月や3ヶ月前に退職の予告をするように契約書に明記しておきましょう。常識的には事前に相談してクリニックの状況をみて退職してくれることは、ほぼありません。通常、できるだけ早く辞めたがります。
逆に、半年以上前から事前に相談してくれるスタッフにはクリニックのことを考えてくれているわけですから、感謝の気持ちを伝えています。契約書に明記しておくことで、すぐに辞めるつもりの人は、面接後辞退してくれる効果があります。契約書だけでなく、面接時に口頭でも伝えます。もちろん、早く辞めて欲しければ、「今は人手があるので、契約書通りでなく特別に早期に退職していいです」などと伝えます。
退職の申し出があって、「契約書通り2ヶ月後に退職してください」と伝えても、「先生は2週間前に伝えればいいというのを知らないんですか?」 と2週間後に退職しようとする人もいます。
たとえ2週間後に辞めたとしても、次の日から来なくなったとしても、給料は支払わなければいけません。損害が発生した際は、別途、あっせんや民事裁判などを通して、請求することになりますが、裁判費用などが高額になるため、クリニック側から訴えを起こすことはまずありません。
すぐに辞めたからといって、もし給料を支払わなければ、労働基準監督署へ元スタッフが相談をすると、労働基準監督署から連絡があり、「支払ってください」と言われます。それでも支払わなければ、是正勧告書といわれる書類を渡されます。まずありませんが、悪質で繰り返す場合は、逮捕されることもあります。
医師1名、看護師1名、医療事務2名ほどの個人クリニックであれば、スタッフを多めに雇用しておくことは厳しいかもしれませんが、辞めそうな雰囲気があれば、多めに雇っておくべきです。
辞めそうかどうか、信頼できるスタッフから聞いておくこともテクニックの一つです。「辞めそうな人いませんか?」と聞くと、案外教えてくれることもあります。辞めそうなのが優良なスタッフではあれば、面談して引き留めることもあります。時間をかければ、面接の基準を高くして、クリニックに合ったスタッフを選びやすくなります。
逆に、時間をかけなければ、面接の基準を低くせざるおえなくなり、微妙なスタッフでも雇用しなくてはいけなくなります。
すぐに辞めてしまって困っている場合、すぐに人を雇用するのに最も効果があるのが、高い給与で募集をかけることです。その際は、他のスタッフの給与も上げる必要があります。当たり前ですが、相場より安いと応募が少なくなります。
相場よりも高い給与を払うのが抵抗があるなら、入職祝い金を設定して、一時的に募集を増やすこともできます。半年勤めたら、5万円支給するなどの方法があります。
とらばーゆに掲載します。一定期間ごとに掲載料がかかります。インディードと異なり、クリックごとに費用がかかるわけではありません。
急に募集が必要な場合は、インディードに応募をかけます。とらばーゆと異なり、クリックするごとに費用がかかります。1クリックあたりの費用を上げたり下げたりすることができるので、広告費を引き上げることにより、より多くの求職者にみてもらうことができます。広告費用を一時的に上げることが、急な退職においては最も効果的な施策といえます。
看護師の場合は、人材紹介会社に依頼すると、比較的早期に紹介があります。想定年収の20%(税別)を支払う必要があります。会社によって規定は異なりますが、1ヶ月以内に退職すると80%、3ヶ月以内に退職すると50%など返金がありますが、費用がかかります。医療事務の人材紹介会社はあまりありません。
辞めようとするスタッフへの引き止める対策はその他にもありますが、ここでは書けません。
返金規定を過ぎた半年くらいして、紹介料の返金がなくなったタイミングで、電話やメールで人材紹介会社が「なにか今のクリニック不満はありませんか?」などと連絡して、また別の医療機関に転職させようとするケースもあるようです。
離職すれば、再度、医療機関側と別の医療機関側から紹介料を取ることができます。辞めたい人を説得して別の紹介会社に取られるよりも、積極的に別の医療機関に紹介する方が合理的とも考えられます。
4.なかなか辞めてくれない