私は元々マンション賃貸派でした。戸建ての注文住宅を建てることになり、家について情報収集し考えた結果、今現在でも家はマンション賃貸に住むのがベストと考えています。
家は多くの人にとって人生最高額の買い物であり、何千万円もの借金をするにもかかわらず、一度購入してしまったらそこに住み続けることになります。
親から「借金してはいけない」と教育を受けてきた人であっても、結婚して子供ができたら疑問を感じることなくローンを組んで家を購入することに、私は疑問を感じます。
人生100年時代といわれる現代社会においては、多くの人にとって家を購入する必要がないと考えています。
基本的には、4人家族であれば、マンション(アパート含む)賃貸一択、マンションが全くない地域にはそもそもその地域に住むという選択をしない方がいいとさえ考えていますが、どうしてもそこに住まなければいけないのであれば、戸建て賃貸という選択になります。
なぜ、そのように考えているのか?説明したいと思います。
なお、家を購入することは金銭的な価値だけではなく、マイホームを持つことによる喜びはかけがえのないことだとも思います。家を購入することや、家に大きなこだわりがある人が注文住宅を建てることを否定しているわけではないこと、ご承知おきください。
家を購入することのメリットとデメリットについては、インターネットで調べれば山ほど情報が出てきますし、ここでは一つ一つ挙げることはせず割愛いたします。
家を買わない方がよい最も大きな要素は、「人間の寿命が延びた」ことにあると考えています。
日本人は寿命が延びており、人生100年時代ともいわれるようになりました。
30歳で結婚してすぐに子供が産まれて20歳で子供が独立したとしても、まだ50歳です。50歳で100歳までの間は50年間もあります。
大雑把ではありますが、各期間ごとにどのくらいの部屋が必要か考えてみましょう。結婚して30歳に子供が産まれたとします。
1.子育て(子供に個室が必要ない)
→30歳から40歳の10年間
2.子育て(子供に個室が必要)
→40歳から50歳からの10年間
3.子供が独立(子供部屋が倉庫に)
→50歳から90歳の40年間
4.自分もしくは配偶者が亡くなりどちらかのみが暮らす
(1人分のスペースが必要なくなる)
→90歳から100歳の10年間
の時期に分けることができます。
上記の例でいえば、70年間のうち子供部屋が必要なのは10年間です。子供が1人であれば1部屋、2人であれば2部屋(少なくとも2人分のスペース)必要になります。
子供が個室を必要として子供が巣立つまでとすると、子供が個室を必要な期間は、短ければ10歳(小学校4年生)から18歳(高校卒業)の8年間、長くても6歳(小学校入学)から22歳(大学卒業)の16年間しかありません。大学に進学するのであれば、自宅から通えるのか一人暮らししなくてはいけないのかによっても変わることでしょう。
ただし、就職しても一人暮らしせずに実家暮らしするのであれば、個室を必要とする期間はその分長くはなります。
子供が独立せず、子供部屋おじさんもしくは子供部屋おばさんとなり同居し続ける可能性もないわけではありませんが、子供が独立したら子供部屋は倉庫になってしまいます。
使わない部屋だけを賃貸に出すわけにもいきませんから、せっかく作った子供部屋も無駄になってしまいます。
夫婦2人で住んでいたときは2人分のスペースで十分だったのに、子供が巣立って夫婦2人で住むときには2人分のスペースでは狭いということはないでしょう。
広い家は外壁や屋根の面積もその分増えてしまいますし、当然光熱費やメンテナンス費用も増えてしまいます。東京都23区内の賃貸で考えると、1部屋分のスペースが月2万円とすると子供2人なら2部屋分で4万円、ダイニングやキッチンなどのその分広いスペースが月1万円とすると、合計月5万円、年間60万円。
少し強引ではありますが、子供が独立してから家を解体するまでの60万円×50年間=3000万円分を無駄にしているという計算もできなくはないです。
実家に帰ると、元子供部屋=倉庫に大量の荷物が置いてあることも少なくありません。スペースがあると、つい余計な物も買って浪費してしまいがちになりやすいということもあるでしょう。
老後は賃貸マンションに住みたくないということであれば、子供が巣立ったタイミングで、夫婦2人で住むためのマンションを購入するのはいかがでしょうか?
営業マンは今売りたいので、そんなことは絶対に言いませんが、夫婦2人であれば、必要以上に広いダイニングやリビングも必要もありませんし、子供部屋も必要ありません。
子供が産まれる前の家の広さに戻るだけですし、子供の生活費や教育費もかかりませんから、その頃にはマンションの購入資金が貯まっていることでしょう。
マンションであれば、冬暖かく寒暖差によるヒートショックを予防できますし、朝ゴミ出しのために早く起きる必要も、戸建のように2階へ上がる必要もありません。
人生100年時代においては、家を購入するのに適したタイミングは結婚して子供が産まれたタイミングではなく、子供が独立したタイミングに変化していく可能性もあります。
夫婦共働きなら、平日8時から18時くらいまでは職場にいるので家にはいません。土曜日や日曜日なども外出していることもあるので、ずっと家にいるわけではありません。
実際に平日に何時間家にいるのでしょうか?
最大14時間、睡眠を除外すると最大7時間です。
夜24時に寝て朝7時に起きるとすると、7時~8時、18時~24時の計7時間しかいません。親だけでなく子供もほぼ同じです。
女性の社会進出が進み女性が働くようになり、専業主婦は減少し続けていますが、せっかく新築で家を建てたとしてもあまり家におらず、徐々に家が古くなっていくのはもったいない気もします。
家を購入するということは長い間そこに住むことになります。
現代の情報社会においては様々な情報が発信されており、以前よりも価値観が変わりやすくなっています。30代のときに良いと思っていた地域だったけど、50代になったらあまり良くない地域と価値観が変わってしまうこともあるでしょう。ましてや70代になったら価値観は大きく変わっているかもしれません。
子育てしやすい地域も、逆に大人向けの飲食店が少ない地域であることもあり、年代によっても住みやすい街というのも変わってくることもあります。
〈大手不動産会社の常務が、身内の40代に「持ち家は持つな」と言う理由〉
今は転職するつもりがなくても、自分の価値観の変化や勤務先の都合などにより、誰しもが転職を検討するようになる可能性はあります。
転職を検討する上で通勤時間を考えると、持ち家が転職先の選択を狭めてしまいます。
電車通勤するなら電車の遅延などのリスクなどを考えると、乗り換えなしが理想的ですが、乗り換えるとしても長時間の通勤は現実的ではありません。
賃貸なら職場から近い場所に引っ越しすることができ、それだけ選択肢は広がります。
仮に転職することにより収入が大きく増えるなら、持ち家により転職を諦めるということになってしまったとしたら、広い意味で持ち家が負債になってしまうこともあるのです。
子供が独立しても自分もしくは配偶者が家に住まなくなることもあります。
・配偶者と離婚して家を出ていってしまった。もしくは家を出ていかなくてはいけなくなってしまった。
・自分もしくは配偶者が老人ホームで暮らさなくてはいけなくなってしまった。
・自分もしくは配偶者が亡くなってしまった。
など、自分もしくは配偶者が家に住まなくなってしまったら、もう一部屋使わなくなってしまいます。
4人家族で住むために購入した家も1人で管理しながら住むのも大変です。
配偶者が老人ホームに入居するための費用を捻出するために、自宅を売却して資金を確保して、自分はマンション賃貸に移り住む必要がある場合もあります。
上記の話でいえば、30歳のときに建てた家をリフォームしながら住み続けたら100歳のときに築70年です。築70年の家というと、今現在でいえば、戦後まもなくの1950年代に建てられた家です。歴史のある住宅街であってもなかなかそのような住宅は少ないです。
仮に高齢の親がそのような家に適切な補修をせずに住み続けていたとしたら、もう少し築年数の浅い家に引っ越すことを勧める人が大多数ではないでしょうか。
たしかに、現在は昔よりも建築技術が発達していて、有償でメンテナンスをしたら60年間保証するハウスメーカーもあります。
とはいえ、70年間いや、60年間も住み続けるのは厳しいのではないでしょうか?
新築のマンションであれば、どうにかギリギリ住み続けることができるかどうか。
現実的には、30歳くらいで家(特に戸建て)を購入した人は、一生住み続けることがなかなか難しい家を購入しているのです。
購入した家は一生住み続けるのは難しく、老後資金がなかった場合は、建物の価値はゼロになるため土地の価値のみの値段で将来は売却して、マンション購入や老人ホームへ入居することになる可能性も念頭に入れるべきです。
こうして家を購入することについて否定的なことばかり言っていると、問題が生じたら家を売却すればいい、子供が巣立ったら売却すると反論されることもあります。
子供が巣立ったら売却することを前提に家を購入する人は少ないでしょうが、木造戸建てを建てて10年後に売却したら、建物の価値は約半分になります。20年後に売却したら、建物の価値はほぼゼロ、土地の価値だけが売却時の価値になります。
〈「家の寿命」中古住宅は新築と築10年でどれくらい価値は変わるのか?〉
家を売買すると不動産仲介手数料が3%×2回(購入時と売却時)、不動産取得税、登記費用、住宅ローンの手数料や返済手数料など費用がかかります。合計するとおおよそ10%弱が費用としてかかってしまいます。
〈家やマンションの売却にかかる費用を解説!手元に残るのは結局いくら?〉
特に木造戸建てを建てて短期間で家を売却すると、損しやすいことがわかります。建物の建築費用を考えると、少なくとも30年は住み続ける前提で購入したいところです。
売却が損ということなら、賃貸に出せばいいと再度反論されることもありますが、家を貸して管理するのは手間もかかりますし、管理会社に管理を依頼するのにもコストがかかります。
素人が本業の傍ら副業として不動産賃貸業をやるわけですから、不動産賃貸を事業にしている会社よりも利回りは低くなってしまうことでしょう。
「利回りは低くなるのは承知で賃貸に出す」というのが実際ではないでしょうか。
定期借家契約ではなく普通借家契約であれば、家賃を払い続けていたら、退去させられることもありませんし、同意なく家賃を値上げされることはできません。
< 賃貸契約後の家賃の値上げって違法じゃないの? CHINTAI情報局 >
将来インフレとなり家賃相場が上がったとしても値上げすることはできないため、近隣の相場よりも安く住むことができるのです。
デフレとなり近隣の相場よりも家賃が高くなってしまったら、安い物件に引っ越しすることもできます。
あまり知られていないですが、インフレに強くデフレにも対応できるのが、賃貸の大きなメリットの一つでしょう。
高齢者はマンションや戸建ての賃貸に住めなくなるから、若いうちに家を購入した方がいいのでは?という意見もありますが、たしかに高齢者は借りにくいというのはあるでしょう。
しかし、普通借款契約であれば合意なく家賃を上げることはできませんし、同じ家に住み続けることができるように法律で守られています。
別の賃貸にも引っ越すこともできます。高齢者の場合は、審査が通りにくいでしょうし、少し時間はかかるかもしれませんが、必ず入居できる家はあります。
私は高齢者自身が住む家が全くなくて困っているという話は聞いたことがありません。
〈高齢者は賃貸物件を借りにくい? 老後の賃貸事情とスムーズに借りる方法を解説〉
高齢者は賃貸に住めなくなるわけではありません。ご安心ください。
戦後の高度成長期であれば、平均寿命が70歳程度でしたから30歳で35年ローンを組んでも、返し終わってからの残りの人生はそこまで長くはありませんでした。
平均寿命が長くなったのは良いことですが、人生100年時代となり人の寿命が長くなりすぎてしまったため、「家を購入して子供が巣立った後も夫婦2人で一生住み続けることが合理的でなくなってしまっている。」「時代に合わなくなってしまっている」と私は考えています。