結婚最大のメリットは何かといえば、子どもが持てることに他なりません。今の日本では、「子どもを作っていい」という社会的な認可を得られるのは結婚だけです。婚外子といった例外もありますが、世間のイメージからすると特殊なケースであり、まだ現代の日本では結婚と子づくりの結びつきが強い傾向にあります。
逆の話をすれば、子どもが持てること以外に結婚がもたらしてくれるメリットというのは、色々な意見があるかもしれませんが、じつはあまり見当たりません。「子どもがいなくても、経済的にも精神的にも楽」といった理由が挙げられることもありますが、それらの多くは結婚していない同棲生活でも得られるメリットです。
子どもを持ち、育てること。これが夫婦最大の役目であり、結婚から得られる最高のメリットなのは間違いないことです。子どもが産まれたら、子育てに時間とお金がかかりますから、結婚という契約をすることにより、社会的にも育児中の母親は生活が保証され、父親は保証する義務が発生します。
そもそもなぜ、私たちはこれほどまでに、結婚がいわば神格化されたかのように、精神に頼るところが大きくなってしまったのでしょうか。理論上では、結婚しないでも子どもは作れますが、少なくとも多くの女性は、結婚してから子どもを産みます。たとえ、妊娠しても結婚できない男性との子どもは中絶することがほとんどです。
なぜ、結婚しないと子どもを作ってはいけないのでしょうか?
日本は元々農耕社会でした。日本の経済は農業によって支えられていました。農耕社会では、何よりもまず、田畑を耕す人手が必要でした。結婚をして、夫婦で手分けして作業をこなす。さらに子どもを設け、農業を覚えてもらい、立派な跡取りへと育てていく。生きていく上で、土地を受け継ぐ者が不可欠な時代でした。目に見える実体的なメリットがあったからこそ、結婚や子育てをしていたということになります。
一夫多妻のような独占的な結婚が日常的に行われていては、余った男性は跡取りを得ることができません。そこで一夫一妻制が採用されたわけです。全ての人たちが結婚して子どもを授かれるよう、世の中のニーズに適って制定されたのが現行の結婚制度だったということです。
一夫一妻制は時代にマッチさせるためのものだったにすぎません。日本であれば、権力者の大名が農業が発達して沢山の食料を得るために作った一夫一婦制に過ぎないと考えることもできます。まぁ、自分たち権力者は、側室などがいて、一夫多妻制を採用していたわけですが。
一夫一妻制は、かつての農耕社会にマッチしていたからこそ、十分に広まり定着しました。さらに時代の流れを追って、結婚制度とのマッチ度を見ていきましょう。
20世紀、日本は工業化社会へと突入しました。田畑に縛られない働き方が提案され、農家の生まれの子が集団就職で地方都市へと出て行くようになります。彼らは工場や事業所で働き、社宅に住む生活を選びました。 自然と結婚を経て子どもを授かります。いわゆる核家族がたくさん誕生する時代へと突入しました。土地や家を守らないといけない、といった拘束はありません。「人手が何としても必要だから、結婚をして子どもを作らないといけない」といった実体的な必要性が自然消滅したのです。
時代の考え方と、結婚制度のマッチ度が薄まっていったのは、この頃からで間違いないでしょう。現代は便利なものがたくさん開発され、ひとりで生きていくのも容易になり、なおさら、結婚へと至る必然性がなくなっています。「結婚しない方がいいんじゃないか」という考えも、ひとつの価値観として受け入れられていく時代となったのです。
時代をさかのぼりますが、狩猟時代には結婚という概念そのものがありませんでした。ただ、快楽を求め性行為をして、子どもができて、一緒に暮らすという流れがあっただけです。
これはいわば娯楽や趣味に近いスタイルであり、こちらのほうがより自然的であるといえます。現代の結婚や夫婦生活に対する意識は、この狩猟時代に近いものになったということでしょう。現代でも、狩猟時代と遺伝子は変わりませんから、当然といえば当然かもしれません。
とにかく、時代の変化にともなって結婚のイメージや制度は変わらなければいけないということです。農耕社会のような、仕事を手伝う人手と土地を守る後継者というニーズがなくなったのですから、一夫一妻制を継続する必要は必ずしもないということがここでの結論です。このままの制度を貫いてしまったら、さらに時代が経過するにつれてズレは深まっていき、結婚のデメリットだけが目立ってしまうようになります。
日本の今後の課題は、「現代に合った子育てがしやすい、新しい制度とはどのようなものか」を追求することになります。