「なぜ日本人は結婚しなくなったのか」を考えていきたいと思います。一つの原因だけではなく、様々な原因があります。
かつて日本には「結婚することが当たり前」という風潮がありました。
結婚が向こうから自然とやって来るような時代です。「皆婚時代」とも呼ばれ、これは高度経済成長期までの日本と概ね被ります。経済的な理由や、労働環境の変化にともない、「結婚しなくてもいい」時代が到来したわけです。「結婚不要時代」とでも呼ぶべきでしょうか。結婚は自分からつかみにいかないといけなくなりました。
出会いのチャンスが増えたことで、かえって妥協できなくなっています。インターネットを覗けば、普段出会わないような素敵な異性だけでなく、その気になれば、芸能人やアイドルと交流できたりなど、これまで踏み込めなかった世界へと容易に飛び込めるようになりました。
恋愛の完全自由化は、日本の結婚事情にどのような影響を与えるのでしょうか。おそらく、経済と同じような結果にたどっています。経済の自由化は、激しい競争を生み、実力至上主義の世の中を描くようになっています。優れた価値を有したものだけが勝ち、相対的に劣っているものは誰からも見向きもされず淘汰されていきます。
恋愛も同じです。自由化によって完全な実力至上主義が生み出されてきているのです。営業力やスペックの高い人から「売れていく」のが自然となり、残ってしまった人たちはいつまでも「買い手が付かない」。そんな実力の世界が形成されています。
悲しいことですが、これが事実です。かつては誰もが自然と行えた恋愛が、自由化によって、選ばれる人に集中する傾向にあるのです。
時代をさかのぼることになりますが、かつての結婚といえば「家と家の結婚」といわれるくらい、社会からの強制や縛りがありました。しかし今ではその枠が取り外されてしまい、恋人探しや結婚は完全な自分本位の自由選択式で、「誰と結婚するのも自由」ですし「誰とも結婚しないでも自由」なってしまいました。
晩婚化や未婚率上昇の話題になると、必ずついてまわってくるのが「仕事」と「お金」の話です。ここではまず仕事の話から進めていきましょう。
女性の社会進出が晩婚化、未婚化を招いた原因のひとつになっていることは、否定できない事実でしょう。人口動態統計を参考にすれば、日本人の平均初婚年齢は年々上昇しています。少し年代をさかのぼっておくと、1970年前後に下がったのを最後に、ずっと上昇し続けているのです。
高度経済成長期のピークを迎えていた日本。70年には高等教育を受けた女性の社会進出が増え、就業率は著しく伸びていきました。このころから平均初婚年齢は上昇を始めました。さらに男女雇用機会均等法が施行されたのは86年。女性の社会進出が与えた経済効果は大きいことでしょう。一方で、自立できる女性が増えていき、結婚する必要性を感じなくなっていったことも見逃せません。
「変な男性と結婚して後悔するくらいなら、リスクのない自由な独身のままのほうがいい」
そういう考え方に至る女性がいるのも自然です。 世の中の風潮として、独身を貫く人がいても当たり前になってきたということです。「ひとりでも平気だから結婚する必要はない」という理屈はいくらか極端かもしれません。
しかし結婚のメリットとデメリットを考えたとき、経済的な不安を感じていない自立した人にとっては、「責任が生まれる」「自由な時間が減る」といったデメリットの部分を重荷に感じてしまい、結婚に対して消極的になってしまうのではないでしょうか。また、それ以上に大きな要素となるのは物理的な部分。「仕事があるので恋愛する暇がない」というシンプルな理由も晩婚化を招いています。
テクノロジーの進化が、私たちの欲求を新しいかたちでカバーしてくれているのです。パソコンで簡単に大量かつ高品質な情報やデータを入手・発信でき、スマホを使って気軽に誰とでもすぐにつながれる現代は、欲求をすぐに満たしてくれる非常に便利な世の中です。誰かと話したいという欲求、誰かに認めてもらいたいという欲求、衝動的な買い物欲求や性的な欲求も、指先でポチポチッと簡単に満たすことができるようになりました。
これが結婚しない・できない人を増やしている原因の一つです。
肉体的な快楽にしろ、精神的な安らぎにしろ、恋愛の代わりを担ってくれるものが、現代には溢れかえっています。 アダルトサイトを利用して性欲処理している人の層が、IT技術の進化につれて増していくことは明らかです。VRなども性欲を満たす、疑似恋愛できるツールも次々と提案されています。>手早く処理できる疑似的なもののほうが、余計な感情が差し挟むことなく自分で好きにできる分、恋愛するよりも安くて楽で良いという考え方を持つ人もいるほどです。
アイドル産業もテクノロジーの進化とともに新しいスタイルを確立しています。男女問わずで、アイドルにのめり込み、リアルの恋愛から望んで遠ざかる人生を歩んでいる人もいます。同様に、ゲームやアニメのキャラクターに入れ込む層が増えているのも、テクノロジーの進化がもたらした結果といえるでしょう。LINEを筆頭としたソーシャルサービスも、寂しさを紛らわせ精神的な安らぎを与えることに一役買ってくれています。
空間的にはひとりであっても、スマホとインターネットがあれば誰かとつながっていられるという感覚が定着したことで、自然と私たちは、恋人や家族の必要性を感じなくなっているのです。
私の周りにも、「ひとりのほうがいい」という考え方を持っている人がいます。ひとりでも十分に欲を満たせ、人生を謳歌できているという感覚が染み込んでしまっているのです。これは間違いなく、テクノロジーの進化のおかげです。皮肉な話ですが、技術の大躍進が、恋愛や結婚を妨害していることになります。
結婚や夫婦生活や子育てよりも楽しいと思えるものが増えてしまったからなのです。結婚の趣味化、そしてテクノロジーの進化。これらの価値がさらにさらに強まっていけば、日本はより少子化に拍車をかけ、先細りの一途です。
結婚生活以外にも楽しいことが人生にはたくさんある現代。そんな世の中にあって、どうやって恋愛し結婚する理由やきっかけを見出していくのかとすれば、それはやはり「寂しいから」に他ならないのです。これは、スマホなどのテクノロジーのおかげで「寂しさを簡単に紛らわせるようになった」という部分と、一見矛盾しているように思えます。結婚が埋めてくれる寂しさと、テクノロジーが埋めてくれる寂しさでは、同じというまではテクノロジーは進化しきってはいないのです。
結婚しない理由に金銭的な事情を挙げる人は多くいます。結婚資金を懸念する人もいますし、住居や子育てといった将来の計画を立てたとき、今の収入では一定以上の生活水準が保てないのでは、という不安に駆られてしまう人もいるようです。
日本の平均年収は頭打ち。それどころか年々給料やボーナスが下がっていく苦しい状況のところもあります。「年収300万円時代」という言葉も、目新しいものではなく見慣れたものになって久しいです。
とはいえ、時代をさかのぼってみれば、経済成長期を迎える前の日本は今よりも断然貧乏を感じている人は多かったはずですが、子どもをたくさんもうけていました。それが日本の大きな国力増強へとつながっていっています。今と昔ではお金の価値そのものが違うので、額面で比較するのは難しいですが、衣食住を見れば明らかで、現代人たちは当たり前のように必要最低限の暮らしが送れているわけですから、かつての日本に比べれば、現代は十分にぜいたくだともいえます。
今は女性も当たり前に社会進出できる時代です。男性でも産休や育休を取れるよう制度が整備されつつあります。数年後には男性の育休が当たり前の時代に来ているかもしれません。
しかし夫婦で共働きして支えあっていく考えにシフトできれば、決して難しいことではありません。日本はあまりにも古風の慣習にとらわれすぎています。結婚したら男性の収入が家庭の大黒柱になると思い込んでしまう節があるのです。まずは固定観念を捨てることから始まります。前の項目と被りますが、自己の結婚への意識改革によって、結婚へのハードルは低くなり、結婚可能性は上がっていきます。
パソコンも携帯の流通していない時代は、娯楽の数が限られていました。楽しめる要素が少ないのですから、必然的に恋愛、極論的には性行為を選ぶ人も多かったわけです。むしろその時代にあるあらゆる娯楽の中で、性行為が最も安上がりかつ大きな快楽を得られたかもしれません。それに準ずるようにして、結婚する人も多かったでしょうし、自然と子どもも増えていたことでしょう。娯楽が多様化した現代、人生の楽しみ方のひとつとして、恋愛もしくは結婚を選ぶ人が減ってしまうのは、至極当然ともいえます。
むしろ恋愛や結婚は「面倒」「お金がかかる」「責任重大」といった重荷を感じてしまうので「選ばれにくい娯楽」に成り下がっているかもしれません。
結婚が趣味化していくのは仕方のないことだと思います。むしろそれは本能的に正しいことで、かつての形式化されていた全婚時代の結婚制度のほうが非自然的であったともいえるくらいです。快楽を求めるからこそ性行為をして、子どもを授かり、家族を築いていくのが自然の流れなのです。
子供が沢山産まれていた時代は、 子供が欲しいから行為していたわけではなく、行為をしていたから結果的に子供が沢山産まれていたのです。その証拠に、現代の社会でも、アフリカなどの出生率が高い地域で、コンドームを配布すると出生率が低くなります。
ですから今さら「結婚を規制しコントロール」していく方針転換は難しく、今後も自由で本能的な恋愛と結婚を続けていくしかありません。社会として行っていくべきは、結婚制度の抜本からの見直ししかないでしょう。そもそもの一夫一妻制度や価値感などを、洗い直していく必要があります。
結婚、そして子育てを、短期的な視点ではなく、長期的な視点でみることができます。子供がいるとその分食費や教育費など家庭生活を維持するためにはお金が必要です。生活水準によって額面はまちまちですが、父親や母親は働かなければいけません。子どもが多ければ多いほどたくさんの資金が必要となり、ときに厳しく辛いときもあるでしょうが、家族の笑顔に接することができるからこそ、今を頑張ることができます。
この期間はいわば投資期間です。
伴侶と共有する愛ある時間や、見守っていく子どもたちの成長は、株主優待とでもいいましょうか。投資する側だからこそ得られる権利です。長い時間が経過し、仕事をリタイアした後。この段階になってようやく機が熟し、投資に見合った以上のリターンを得ることができます。子どもたちは独立し、それぞれの新しい家族を築いて、孫が生まれているかもしれません。
孫育てが一番の趣味というおじいちゃんおばあちゃんがいるくらいです。孫に会えることが人生の楽しみになっているはずです。高齢になると体は思うように動かなくなっていきますが、長期投資がうまくいき、それを補ってあまりあるくらい、家族たちが支えてくれ、投資期間の我慢や苦しみなどちっぽけに思えるくらい、不自由と憂いのない幸福な老後がやって来るかもしれません。
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