クリニックを探している人は、あなたのクリニックと競合クリニックを比較されます。よりクリニックのホームページを魅力あるものにして選ばれることが大切です。診療時間、休診日、所在地などの基本情報が一目で分かるように記載されていること、迷わずたどり着けるように分かりやすい交通案内が記載されていることは必須です。
病院を探している人はどのような内容を知りたいのかは、ある程度決まっており、以下のページは作成しておくと良いです。
・ クリニック紹介→クリニックの特徴・院内設備・院内風景など
・ 院長(医師)紹介→院長挨拶・経歴など
・ 初めての方へ(初診のご案内)→受診の際に必要な持ち物・初診の流れなど
・ よくある質問
・ 診察時間
・ アクセス
・ よく診療する疾患名や症状名の解説
・ 料金表
「比較検討」とは、クリニックを探している人が、候補となるクリニックの中から、実際にどこのクリニックに足を運ぶかを決めるために、それぞれの条件を見比べることです。
つまり、どこのクリニックに行くかを決める作業のことです。立地(患者にとって交通の便が良いかなど)などの物理的要素に加え、診療時間(行けそうな時間に空いているか、夜遅くまで診療しているかなど)、専門性(自分の病気を診療するのが得意かどうかなど)、口コミ(評判)も大きな要素になります。
口コミには実際の知人に「○○クリニック、良かったよ。オススメだよ」と言われたなどの、リアルな「口コミ」のほか、ネット上の口コミサイトを見て「○○クリニックは待ち時間が短くて良かった」などのネット上の口コミもあります。
比較検討している患者さまが、ネット上の口コミサイトを見るとき、その大きな基準になっているのが、「悪い口コミがないか」です。患者さまが何よりも望んでいるのは、「最高なクリニックと出会うこと」ではなく、「最悪なクリニックを避けること」だからです。
患者さまがクリニックに求めることは、およそ決まっています。適切な検査や治療をおこない、治療を受けることで病気が治ること、医師からの説明がわかりやすいこと、待ち時間が短いことなどが「良い」と評価されます。
言い換えると、「良いクリニック」にはほとんど差がないのです。差がないからこそ、比較検討している患者さまは口コミのどこを見るのかというと、評価の悪い口コミです。なぜ評価が低かったのかを事前に知ることで、自分が同じ嫌な思いをするリスクを軽減させようという心理が働くからです。ですから、「悪い口コミ」がないことが、比較検討で選ばれるクリニックにとって大切なのです。
ところで、リアルな口コミでどのような評判が生じているのかを正確に把握することは、なかなか難しいものですが、その一方でネット上の口コミは、意識的にチェックすることで、かなり詳しく知ることができます。まずは自分のクリニックに関して、ネット上にどのような「口コミ」が載っているのかを知ることから始めましょう。
「自院のクリニック名+評判」「自院のクリニック名+口コミ」などと検索すれば、口コミサイトなどで、自院のクリニックの評判を知ることができます。また、グーグルマイビジネス上にも口コミは掲載されています。
自分のクリニックの評判を知ることは、「比較検討」で選ばれるクリニックになるための第一歩です。なお、「口コミ」では、先生が優しい、よく話を聞いてくれる、スタッフの感じがいいなどの人柄についてもよく語られます。
またクリニックは、医療機関から患者を紹介されたり、医療機関を患者に紹介したりお互いに紹介をし合う関係ですから、関連する医療機関の全てに対し、丁寧な応対を心がけることが必要です。応対に配慮が必要なのは、医療機関に限ったことではありません。
それは、調剤薬局や取引先に対しても同じです。ときどきクリニック付近の調剤薬局に対して自分のクリニックの小間使いのような扱いをしている医師がいますが、これはいけません。
ほとんどの患者にとって、調剤薬局はクリニック訪問後に決まって訪れる場所であり、調剤薬局を出るまでの一連の流れの全てが「医療機関(クリニック+調剤薬局)に行く」ということなのです。ですから、万が一にも調剤薬局でクリニックを悪く言われるようなことがあっては困ります。
調剤薬局と不仲になってしまうクリニックもありますが、もったいないことです。さらに口コミは、ドラッグストア、治療院、美容院、喫茶店など、人が集まり「話す」場所や、医療機関に限らず、話題の出やすい場所でも生じます。
多くの人と接する人、口コミするのが好きな人はインフルエンサーといえます。
現実社会で生じる「口コミ」には、非常に強い力があります。口コミの力でいつも患者が絶えないクリニックがある一方で、ひとたび「ママ友ネットワーク」にクリニックの悪い噂が流れ敬遠されるようになれば、そのクリニックは業績悪化の危機に立たされるでしょう。それほど口コミは大きな力を持っているのです。
ママであれば、まずは自分の子供、夫、両親、子供の幼稚園(保育園)やご近所繋がりのママ友、子供の頃から住んでいたのなら、小学校、中学校、高校、職場のママ友など多くのネットワークを持っているわけです。
それでは、ここで良い口コミがどれだけ来院患者数に影響するのかを理論的に考えてみましょう。
とても評判の良いA先生が患者を1人診ると、仮に20パーセントの確率で新規患者を紹介してもらえるとします。また、まあまあ評判の良いB先生が患者を1人診ると、仮に10 パーセントの確率で新規患者を紹介してもらえるとします。
それぞれが1日10人の患者を診て、分かりやすいように10日間を1サイクルとしましょう。
A先生は100人の患者を診て、20人に紹介されました。
=患者の合計人数120人
B先生は100人の患者を診て、10人に紹介されました。
=患者の合計人数110人
A先生は120人の患者を診て、24人に紹介されました。
=患者の合計人数144人
B先生は110人の患者を診て、11人に紹介されました。
=患者の合計人数121人
A先生は100人×1・2の10乗
≒患者の合計人数619人
B先生は100人×1・1の10乗
≒患者の合計人数259人
このように、たった1割の紹介率の差が、100日後には619-259=360人、実に2倍以上の患者数の差になるのです。
同様に、再診率(リピート率)を計算してみましょう。
A先生は100人診療して、そのうち90パーセントがリピートしてくれるとします。この場合、100日後の再診率は、100×0・9の10乗≒35人となります。
B先生は100人診療して、そのうち80パーセントがリピートしてくれるとします。この場合、100日後の再診率は、100×0・8の10 乗≒11人となります。
この数値から見ても、開業してから一定の時間が経過したクリニックの患者さま数は、医師の能力(紹介率や再診率など)に相関関係があることが実感できます。このようなことからも、クリニックの院長は自身がクリニックの広告塔であり、口コミされる対象であることを意識する必要があります。
クリニックの中でも外でも「皆があなたを見ている」という意識が大切です。患者さまへの応対は、クリニックの外で話しかけられたときにも愛想よく振る舞い、一言声をかけるなど周囲に気を配りましょう。
日頃から患者本位の接遇を心がけ、その結果、良い口コミをいただけるようなクリニックを目指したいものですが、その一方で、ときに明らかに悪意のある口コミや、誹謗中傷が書き込まれる場合もあります。悪意のある口コミが、個人の権利を侵害しているなどの一定の条件を満たしている場合には、正当な手続きを踏むことによって悪質な口コミの削除を求めることができます。
この方法が使えるのは「プロバイダーが介在している場合」であり、残念ながら「2ちゃんねる」のような掲示板は対象になりません。この制度は、「プロバイダー責任制限法」(「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」)という法律がもとになっていて、名誉を傷つけるような悪質な口コミを削除することができます。
削除までは次のような流れです。
こうして事業者側は、削除依頼者からの要請に応じて該当の口コミを削除することによって削除依頼者からの損害賠償の責任を免れる、というのがこの「プロバイダー責任制限法」の仕組みです。また、「情報の開示請求」を行えば、権利を侵害する情報(悪意のある口コミ)を発信した人が誰かということも明らかにすることができます。
以上のように、プロバイダーに対して削除依頼を出すことで、ネット上の誹謗中傷を消せる場合もあります。
グーグルで検索した際に表示されるグーグルマイビジネスは基本的には消すことができません。
ただし、明らかに口コミのガイドライン違反した場合には、削除してくれることもありますので、そのような場合には通報してみてもよいでしょう。誹謗中傷のような内容を書き込まれて傷ついている先生もいますが、反省するべき所は反省して、心が折れてしまっては診療に影響しますので、あまり気にしすぎないことです。
私たちの周りは、リアルの世界はもちろん、ネットの世界もたくさんの口コミで溢れています。その対象は、医療に限りません。飲食から家電製品、サービスに至るまで、ありとあらゆるものが「口コミ」の対象となり得るのです。
なぜ人は「口コミ」をするのでしょうか。それは人間が、(たとえ赤の他人に対してでも)人に教えてあげたい、という気持ちを持つ、社会的動物だからではないでしょうか。
だから、良い情報も悪い情報も拡散するのです。中でも悪い情報は、自分が体験した悪い体験を繰り返さないように「教えてあげたい」という気持ちが強く現れるため、良い口コミよりも悪い口コミのほうがより広がりやすいのです。
人には「プラスになりたい」という思いに増して強く、「マイナスになりたくない」と考える本能があります。これは「悪いこと=危険=生命の危機」という思考回路の生存本能に由来しているのでしょう。
一般的な医療機関に対する期待感の一つに、「きちんと治って当たり前」という価値観があります。ですから、この期待感を下回ると悪い口コミが出やすいと言えます。 さらにクリニックにいらっしゃる患者は、ご本人が体調のすぐれないタイミングで来院していますから、そこで悪いことがあると記憶に残りやすくなります。これは、マイナスの状況のときにマイナスが重なると、より一層気分が沈むからです。
5.初診患者さまに、嫌われないために