クリニックに患者さまを呼ぶための最初の一歩である「認知」について詳しく説明します。
「認知」されているということは、「以前に、病院の前を通ったことがある、ホームページを見たことがある、チラシを見たことがあるなど、体調が悪くなって病院探しをする前にクリニックの存在が知られていることであり、人がいざ病院にかかろうと思ったときに、その病院のことが想起されて『思い浮かぶこと』」です。
仮に、今突然歯が痛くなってしまって、歯科クリニックに行こうと考えたとき、思い浮かぶ歯科クリニックはありますか?
認知されている歯科であれば、病院探しの段階で候補になっても、スマホやチラシで病院探しをすることなく比較検討せず、そこの歯科に行くこともあるでしょう。
クリニックが「認知」されるために、一番大事なのは、立地です。
どんなに腕のいい先生でも、人や車がまったく通らない立地では認知されず、口コミをしてくださる最初の患者さますら、訪れない状態になります。クリニックに向いている立地についての要素を分解して考えてみると、6つに分けることができます。
クリニックのある地域に住んでいる人、もしくは働いている人の数。クリニックの医療圏に、潜在的にどのくらいの患者さまがいるかが分かります。年齢層、男女比、住宅街かビジネス街かといった情報を調べることによって、科目別の需要がどのくらい見込まれるかが判断できます。
一般的な内科クリニックであれば、電車社会の住宅街ですと 半径0.5~1㎞、車社会の住宅地ですと半径2~4kmがが目安になるといわれています。
なお、車社会の極端に人口密度の低い地域では、半径5~10kmなどで設定されることもあります。
ちなみに、徒歩1分=約80m 自転車1分=約200m 車1分=約400mが各手段における1分あたりの距離になります。
年齢によって受診する確率(受療率)がほぼ決まっており、年齢層によってその科目がどれくらいのニーズがあるかどうかわかります。
電車社会であれば、遠方からの患者さまは自宅から電車に乗って、最寄り駅からクリニックに来院されます。そういった意味でも、電車社会では駅近であることが重要です。車社会であれば、遠方からの患者は自宅から車でクリニックに来院されます。車での交通の便が良い場所で、車が停めやすい駐車場があることが重要です。
もちろん、歩いて15分の距離にあるクリニックに歩いて通う患者もいらっしゃるでしょうし、自転車で20分の距離にあるクリニックに自転車で通う患者もいらっしゃいますが、医療圏の考え方はどれくらい来院が見込めるかの目安になります。
一般内科より施設数が少ない、小児科、整形外科、眼科、皮膚科、耳鼻咽喉科、心療内科、婦人科などですと、その分医療圏が広がる傾向にあります。内科でも、専門に特化した場合、呼吸器内科、消化器内科、循環器内科などでは、一般内科より医療圏が広がり、より専門性の高い血液内科、膠原病内科などはより遠方からの来院が見込まれます。
人数が多いほど、クリニックが多くの人の目に付きやすくなります。昼間と夜間では通行量に変化がある場合もあります。通勤、通学時間帯では、住宅街、オフィス街では人が増える傾向にあります。
通行人であってもカウントするべきではない人もいます。それは浅草や銀座などを訪れている観光客や、銀座や新宿三丁目などの歓楽街を歩いている買い物客などです。浅草の雷門付近の通行量は多いでしょうが、確認しなければならないのはその通行人のうち、住んでいる人、働いている人の割合です。
なぜなら観光客、買い物客は、基本的にはクリニックの患者さまにはならないからです。これらのカウントするべきでない人は、通行人の「服装」を見れば、ある程度分かります。やはり、住んでいる人や、働きに来ている人に注目すべきです。
特に1階と上層階とでは、認知度の差が大きくなります。クリニックの外観や、据え付け看板などにより、記憶に残ります。逆に、記憶に残らないと認知されません。
毎日の日常生活の中で、何度もクリニックの前を通って認知されるようになります。
クリニックがどのくらい目立っているかが重要なわけです。特に1階と上層階とでは、認知度の差が大きくなります。クリニックの外観や、掲げている看板などによっても、記憶の残り方に差が出ます。
人の流れを生み出す施設(顧客誘導施設)が近くにあると、認知されやすくなります。顧客誘導施設は、多くの人がその施設を目的に集まってくるので、近くに立地していると、より多くの人に認知されやすくなります。
電車社会の駅であれば、駅前にスーパーマーケットがあり、近くに住んでいる多くの人が訪れますので、クリニックが駅前の1階に立地していると多くの人に認知されます。目安としては、住宅街の駅から3分以内であれば、人通りが多く有望な立地と言えるでしょう。また、車社会の基軸は、必ずしも駅とは限りません。ショッピングセンターやスーパーなどが顧客誘導施設になりますので、むしろ地方にある寂れた駅前は避けるべきです。
車社会の場合にお勧めなのは以下の場所です。
・ ショッピングセンターの中で認知されやすい場所(入口付近や人通りのある区画)
・ 大型スーパーのそば
・ 幹線道路の角地、ロードサイド
ショッピングセンターにはテナント全体のバランスを図るために「一業種一社まで」というような決まりがあることも多く、テナント数の規定や何を誘致するかはショッピングセンターによりますが、一度入れば同じショッピングセンターの中に競合クリニックができることはほぼありません。これは排他性がありテナント賃料が少々割高だったとしても、非常に大きなメリットです。ただし、土曜日、日曜日、祝日などは診療しなくてはいけない契約の場合もありますので、確認が必要です。
また、ショッピングセンターの駐車場に車を一度停めると、そこで全ての用事を済ませようとする傾向があることもプラスに働くでしょう。大型スーパーの脇も同じ理論です。居住者が定期的に訪れるスーパーの近くのクリニックは、スーパーの駐車場に車を停めて買い物をした帰りにその足で立ち寄れることもあって「かかりつけ」に選ばれやすいと言えます。さらに幹線道路の角地は、幹線道路の交差点では信号で停車する車が多く、その停車時間が長い傾向にあるため、運転者が見る時間が長くなります。
また、道路の角にあると2つの車線の道路から目に留まりやすくなり、多くの人の道標として記憶に留まり、認知されやすくなります。車社会の幹線道路沿いなどで開院する場合は、スタッフ用の駐車場以外にも、10台以上の駐車スペースを確保することが必要です。車を入れにくい駐車場というのは、それだけで患者さまに敬遠されます。ゆとりを持った駐車場確保が必要です。開院する前から近隣のテナントの駐車場を借りたり、使わせてもらう許可を得たりすることができると、その分より省スペースで開業できます。
極端な過疎地などを除けば、競合クリニックが全く存在しない地域はほぼないと言えます。特に都市部を中心に医療機関の多い地域では、複数のクリニックがしのぎを削っており、競合クリニックの存在で業績が大きく左右されます。仮に、半径800mの陸の孤島で、競合がなく開業しているのであれば、1日当たり40人の患者さまが見込まれる場合は、1日40人の患者さまの来院があるなどですとわかりやすいのですが、実際には競合クリニックがあるので、その影響を考えなければなりません。
たとえば、競合が1院あれば、単純に2で割ると1日当たり20 人の患者の来院ということになります。標榜科目が同じであれば、クリニック間の距離が近いほど患者さまの奪い合いになってしまいます。たとえ、標榜科目が異なっていたとしても、小児科と耳鼻咽喉科は、子どもの風邪や中耳炎で、耳鼻咽喉科と内科は、風邪やインフルエンザなどの病気で少なからず競合しますので、注意が必要です。競合の強さも重要であり、好立地にあり、ホームページがしっかりしていて、評判が良いクリニックが近くにあると、自院に来院する新規患者さまが少なくなり、経営面で苦戦しやすい傾向にあります。
逆に、診療圏調査などが同じ条件だとしても、好立地ではなく、ホームページがなく、評判の良くないクリニックが近くにあったら、自院に来院する新規患者さまがその分増え、安定しやすい傾向にあります。一般内科で言えば、開業する際は、少なくとも電車社会では直線距離で2km、車社会では8km以内などで、同じ科目のクリニックについて、ホームページなどを確認しておくべきでしょう。
同じビルでも1階と3階では、認知度がまるで違います。そして私は、家賃の差を考えたとしても1階が良いと考えています。それは次のような理由からです。
一般的なビルの場合、1階にあるクリニックを人が認知したならば、2階を認知する割合は3人程度であり、3階以上の上層階にあるクリニックを認知する割合は1人程度にまで落ち込みます。自宅近くの駅前にある1階のコンビニの、ビル2階や3階にどんな店が入っているか覚えていますか?なかなか覚えていないでしょう。
もしも1日に1000人の人が認知してくれるクリニックで、認知してくれた人のうちの100人に1人の割合で来院してくれるのだとすると、「認知」による新規患者数は1日10人、2階で3人、3階以上の上層階では1人です。さらに、1人当たりの単価5000円とすると、次のようになります。
10人×21日(1カ月の開院日)=210人
210人×5000円=105万円
3人×21日=63人
63人×5000円=31万5000円
1人×21日=21人
21人×5000円=10万5000円
105万円-31万5000円=74万5000円
105万円-10万5000円=94万5000円
この数字をご覧いただくと、上層階は圧倒的に不利であることがお分かりいただけるのではないでしょうか。
多くのクリニックは2階以上の上層階で開業しがちですが、私から言わせると、その考えは明らかに間違っています。ただし、新宿などの大きなターミナル駅前1階ですと、家賃が高額になり採算が合わなくなるため避けた方が良いケースもあります。ちなみに、当院のある新宿駅3分ほどのビルですと、1階は坪8万円前後、2階以上でも坪3万円前後します。
「認知」は「かかりつけ」までのステップにとって、非常に重要な最初のステップです。駅徒歩何分の場所の何階で開業するかは大変重要な問題ですから、よくお考えになって開業してください。
「科目」によって例外もあります。
ここで、標榜科目と立地の関係性について触れます。
「認知性を高めるために、電車社会の住宅街であれば駅近の1階で開業を」と説明してきましたが、科目によっては該当しない場合があります。それは、次の科目の場合です。
・ 心療内科
・ 婦人科
・ 美容
これらの「例外」の科目では、「クリニックに入るところ、入っているところを他人に見られたくない」と考える人が多いため、エレベーターで昇っていくような駅前の「上層階」のほうがいいでしょう。
車社会の寂れた駅前が「禁忌」である理由を述べてみましょう。
・ 十分なスペースの駐車場を確保しにくい
・ 比較的、賃料が高い
・ 周囲に空きテナントがあり、競合が容易に進出してきやすい
車社会の寂れて閑散とした駅前は、テナントが空いていることが多いので、競合するクリニックが新規開院しやすいため経営上のリスクが高い上、患者さまにとって駐車場が停めにくい、台数が確保できないなど不便です。
クリニックの開業場所の見つけ方について説明します。
クリニックを探すには、
・ 不動産仲介会社に頼む
・ 調剤薬局に情報提供を求める
・ クリニック開業のコンサルティング会社に頼む
などの方法があります。一項目ずつ見ていきましょう。
希望するエリアの不動産仲介会社に条件面などを伝えて、空き物件が出たら連絡してもらうように依頼しておきます。その際にはポイントがあって、管理会社に仲介してもらうほうが仲介会社に仲介してもらうよりも交渉余地があると言えます。
この場合、管理会社はオーナーとクリニックの両方から仲介手数料を手にすることができます。仲介手数料は家賃の100パーセントとすると、家賃が50万円であれば、50万×2=100万円を管理会社は手にします。オーナー側とクリニック側双方の仲介手数料が、管理会社に入ることになります。
一方、仲介会社も入る場合、管理会社(オーナー側)が手にするのは50万円で、残りの50万円は仲介会社(クリニック側)が手にします。オーナー側の仲介手数料のみが管理会社に入ることになります。
このようなことから、〈ケース1〉の場合のほうが、より「交渉の余地がある」と考えられます。管理会社としては、仲介がうまくいけばクリニック側の仲介手数料を手にすることができるので、クリニック側からの条件に対して、オーナーを説得してもらいやすくなります。特に、オーナーから信頼されている管理会社であれば、より良いでしょう。 家賃だけでなく、敷金や礼金は交渉する余地があります。
なお、不動産契約の際には、細かい退去時の条件などもよく確認しておきましょう。
調剤薬局は、クリニックの開院・閉院の情報に精通し、それらのクリニックの状況に合わせて、調剤薬局の新規出店や閉店を見極めています。そのため、特に全国展開しているような大きな調剤薬局には、あらかじめ「クリニックの開院場所を探している」と話しておくことで、調剤薬局の近くの物件が空いたときにその情報を回してもらえる可能性があります。
クリニックにとって、開設するクリニックの近くに調剤薬局があることは大きな強みになりますし、それは調剤薬局にとっても同じです。どちらにもメリットがあるのです。
クリニック開業コンサルティング会社とは、クリニックの事業計画作りや開業準備をはじめとしたクリニック開業の専門家がいる会社です。クリニックの開業場所についてだけでなく、開業までの一切をサポートしてもらうこともできます。大手のクリニック開業コンサルティング会社では、医療モールを作ってそこを紹介するなどの業務も行っています。
コンサルティング会社の中には、医療機器会社や内装会社から紹介料をもらう会社もあるので、事前に確認しておくことをお勧めします。
良い立地に入居したいのはクリニックだけでなく、同じくらいの広さが必要な業種と競争になります。コンビニ、ドラッグストア、飲食店、カフェ、美容室、理容室、マッサージ、エステなど様々な業種があります。
日本国内の業種別店舗数は、統計により前後しますが、コンビニ5万、ドラッグストア(大手)2万、美容室22万、理容室12万、診療所10万、歯科診療所7万、寮業(接骨院、鍼灸、マッサージなど)13万ほどになります。
大手の賃貸情報サイトに掲載されるまでに、オーナーの懇意にしている不動産仲介会社や、管理会社経由で、入居が決まってしまうことも少なくありませんので、賃貸情報サイトに出回る前に、情報を得ること非常に重要です。
不動産は、魚屋さんと同じで、鮮度が大事です。店舗に強い大手の不動産仲介会社だけでなく、開業候補地域の地元に根づいた不動産仲介会社に、直接挨拶に行って名刺を渡し、条件を伝えておくと物件情報が出てきたら連絡をくれるかもしれません。
テナント向けの物件探しをするのは、初めての先生ばかりでしょうから致し方ないのかもしれませんが、開業して立ち上がり苦労しているのは、立地が悪い先生ばかりです。
「駅から遠い」「家賃が安いけど無駄に広すぎる」「駅から遠くないけど全く目立たない」など、なぜここを選んでしまったのか悔やまれます。特に親や親戚から継承したクリニックでの経営をする場合にも、本当に来院が見込まれるのか、慎重に検証する必要があります。
逆に今まで、開業場所が良くて集患に困っているクリニックは見たことがありません。開業地域が限定的であれば、場合によっては半年以上数年以内物件を待つべきこともあります。
結論としては、クリニック開業用の物件には、賃貸がお勧めです。なぜなら、賃貸は身動きが取りやすいのに対して、一度購入してしまうと身動きが取りにくくなるからです。
購入した場合のデメリットとして、たとえば、住宅と一体型のクリニックを購入した場合、子どもが増えて手狭になったとしても手の打ちようがありません。同様に、クリニックが繁盛して手狭になったとしても面積を増やすこともできません。一番困るのは、隣近所に似たような科目のクリニックができた場合です。患者の奪い合いで利益は上がらないかもしれませんし、だからといってその状態で物件を売りに出しても、二束三文になってしまいます。
このように、いったん物件を購入してクリニックを開院してしまうと、購入当初とはさまざまな条件が変わったとしても「ローンが残っている」ために身動きが取れなくなってしまうのです。
反対に、賃貸には次のようなメリットがあります。
・ 事業の規模に合わせて面積を拡大・縮小することができる
・ 自宅を家族構成に合わせて面積を拡大・縮小できる(クリニックと居宅が別の場合)
・ 街を歩く人の流れの変化に合わせて移転できる(大型ショッピングモールができるなどで人の流れが大きく変わったときには、それに合わせて移転できる)
クリニックを経営する上では、機動性があったほうが圧倒的に有利です。
医療継承とは、後継者のいないクリニックを引き継いだ開業のことです。医療継承によって引き継がれたクリニックのことを継承クリニックといいます。医療継承は、新規開業に比べ開業コストの負担が少なく、立ち上げ期のリスクが回避できるなど、メリットの多い開業の選択肢です。開業を望む方と引退を望んでいる方の、双方にメリットがあります。
継承開業を希望する場合は、調剤薬局や医療コンサルタントに要望を伝え、情報を集めます。継承物件の最大のメリットは、なんといってもそれまで通院していた患者さまが、引き続き来院してくださることです。
通常、新規にクリニックをオープンさせた場合、かかりつけになっていただくまでにはある一定の時間が必要であり、それまでの運転資金も必要です。一方、継承物件では患者ごと継承しているため、クリニックがオープンしたその日にも、かかりつけの患者さまに来ていただけます。
・ 開業時に一定の患者数(既存患者)が確保されているため黒字化しやすく、経営が安定する
・ 初月度からおおよその診療報酬が予測できる
・ 初期投資(内装工事・医療機器にかかる費用)を抑えられる
・ スタッフを継続雇用できる
・ 前のドクターの評判が悪いと、当初はクリニックの評判が悪くなりやすい
・ 立地が選べない(立地条件が悪い場合、認知されるまで時間がかかる)
・ 内装が古い、バリアフリー対策が取られていないことが多い
・ 譲り受けた医療機器が古く、望む医療を提供できないことがある
・ クリニック継承のための費用や手数料が必要なことがある
・ 既存の患者さまに迷惑をかけずに済む
・ スタッフに迷惑をかけずに済む
・ 原状回復費用(クリニックを借りたときの状態に戻す費用)が抑えられる
・ 医院の営業権を売却することで、老後の生活資金を補える
・ 継承開業したい医師が現れないことがある。特に、患者数の少ないクリニックや立地の良くないクリニックではそのような傾向がある
・ 開業したい医師が自分と同じ診療をするかどうか不安に思う
・ 万が一再開したいと思ったときに、働く場所がない? 一度引退して、再開するケースはかなり少ないが、継承開業した先生がいる場合には、再開するのは難しいと言える
・ 継続雇用で条件が違う場合、元々の従業員から不満の声が出る可能性がある
たとえば、1日平均20人の既存患者がいるクリニックを継承した場合、患者1人の売り上げを5000円とすると次のような計算になります。
5000円×20人=10万円/日
10万円/日×20日(1カ月の営業日数)=200万円/月
200万円/月×12カ月=2400万円/年
つまり、常に1日に20人の既存患者が来院するクリニックには、年間の売り上げが2400万円担保されます。この確実な売り上げが担保されていることは、開業時の経営にとって大きな助けになります。
立地以外にも、クリニックの認知性を高めるための要素に、「看板」があります。>看板のデザインに関してはプロの意見を求めたいところですが、最も看板で伝えたい情報は、「科目名」です。
ときどき「○○クリニック」と、クリニック名しか書いてなかったり、科目名が書かれていても文字が小さくて目に入ってこなかったりする看板を見ることがありますが、これはとてももったいないことです。これでは看板を初めて見た人は、どんな病気を診てくれるクリニックなのか分からないからです。また、何の科を診てくれるクリニックなのかが分からないのにクリニックの名前だけを記憶することは少ないです。
なお、看板には次のような種類があります。
① クリニック前看板…クリニック前の壁面、窓、袖看板、置き看板
② 駅看板…電飾壁看板、ホーム野立て、ベンチ
③ 電柱看板
④ 野立て看板…幹線・主要道路、交差点などに立てる看板
では、それぞれの看板の特徴を見ていきましょう。
クリニックのフロア周辺には、正面入口前の看板以外にも、複数の看板を設置します。その際、前を通る通行人の目に入り、クリニックの存在が記憶に残りやすい看板作りを目指すことが鉄則です。
特に周りが住宅街の駅では、駅看板の多くをクリニックやその他の医療関係が占めているように思います。多くのクリニックの看板が目に付くと、つい「自分のクリニックも」と考えがちですが、実は、他業種は駅看板に注目していないから、結果的に医療関係が目に付いている状態です。コンビニやスーパーなど大手のチェーン店が出しているのは見たことがありません。効果がないからこそ、他業種は出さないのです。
私は、クリニックの駅看板は出すべきではないと考えています。月額の費用だけでなく、看板制作費や撤去費も馬鹿になりません。看板広告というものは、クリニックの所在地から離れている場合、場所が想起されにくく、効果が薄れていきます。
電柱看板は認知されにくく、即効性はありません。主な効果は、長期間、看板を出し続けることで地元の人に覚えてもらうこと。そして、クリニックへ向かおうとしている人に対する道案内ですが、そもそも電柱看板がないと見つけられない場所にクリニックを開設することは、認知面の課題から避けるべきです。
野立て看板は、車社会における駅看板の役割を果たすものです。駅看板と同じように、クリニックから離れた場所に看板を出しても、見た人はクリニックの場所を想起しにくいため、効果的な広告とは言えません。
3.スマホを制するクリニックが