私は、医学部の学生時代から、将来は開業しようと決心し、医学だけでなくクリニックの経営を勉強してきました。
2006年に医学部を卒業後、2009年に28歳で、クリニック激戦区新宿において、10坪ほどのクリニックを開業しました。10年経過した現在は、1日400人ほどが来院していただけるクリニックになりましたが、順風満帆にすべてがうまくいったわけでなく、様々な苦労をしてきました。
これから開業する勤務医の先生や、開業医の先生方には、できるだけそのような苦労をせず、患者さまに支持されるクリニックを運営していただくためにも、役立つノウハウをホームページに公開しました。
2017年には、開業医のための開業医によるクリニック経営の本を出版しましたが、本はホームページよりも詳しく書かれていますので、ホームページを読んでご興味持っていただいた方は購入していただくとより知識が身につくでしょう。
クリニックを経営する上で最も大切なことは、「いかに多くの患者さまにとっての『かかりつけ』になるか」です。かかりつけのクリニックとして信頼され、何度も来院してくださることにより、経営は安定します。
ここでの「かかりつけ」の患者さまとは、内科であれば、高血圧などの慢性疾患があり、定期的な通院が必要な患者さまや、定期的な通院が必要ではなくても、風邪の症状が出たときには毎回そのクリニックに来院する患者さまのことです。
クリニックに患者さまを呼ぶための最初の一歩である「認知」について詳しく説明します。
「認知」されているということは、「以前に、病院の前を通ったことがある、ホームページを見たことがある、チラシを見たことがあるなど、体調が悪くなって病院探しをする前にクリニックの存在が知られていることであり、人がいざ病院にかかろうと思ったときに、その病院のことが想起されて『思い浮かぶこと』」です。
仮に、今突然歯が痛くなってしまって、歯科クリニックに行こうと考えたとき、思い浮かぶ歯科クリニックはありますか?
認知されている歯科であれば、病院探しの段階で候補になっても、スマホやチラシで病院探しをすることなく比較検討せず、そこの歯科に行くこともあるでしょう。
多くの人にスマホが普及したことにより、クリニックについてもまた、スマホで検索される時代になりました。
地域や科目にもよりますが、おおよそ8割前後がスマホ、2割前後がパソコンになります。都心や若年層ほどスマホの割合が高く、地方や高齢者ほどパソコンの割合が高い傾向にはあります。
「病院探し」とは、「体調が悪いなどのときに、具体的に行くべきクリニックを探すこと」を指しています。
クリニックを探している人は、あなたのクリニックと競合クリニックを比較されます。よりクリニックのホームページを魅力あるものにして選ばれることが大切です。診療時間、休診日、所在地などの基本情報が一目で分かるように記載されていること、迷わずたどり着けるように分かりやすい交通案内が記載されていることは必須です。
病院を探している人はどのような内容を知りたいのかは、ある程度決まっていますのでご紹介いたします。
初診時の患者が受ける印象は、「再診→かかりつけ」に繋がる最初の一歩として非常に重要です。初診患者への接遇は行動を細分化してマニュアル化します。初診の患者さまへどのような応対をするかによって、「また来よう」と思っていただけるかどうかが決まります。
そのため、クリニックの接遇やルーティンワークはマニュアル化し、どの事務・看護師が応対したときにも一定の水準以上の応対ができるようにスタッフを教育することが大切です。その土台を構築した上で、医師や看護師がそれぞれの役割に沿った応対や接遇を遂行することで、クリニックの評価が決まっていきます。
「かかりつけ」とは、患者がその科目にかかる病気や症状になったときに、「そのクリニックに行こう」と想起されるクリニックのことです。定期的に通院するクリニックとして「選ばれる」ためには、クリニックの医師に対する「信頼」が欠かせません。
経営者としての役割の中でも特に大事なのが、事務や看護師の「採用」です。クリニックの良しあしを評価する際、スタッフの質は大きなウエイトを占めるものだからです。入職する多くの人は、採用の逆ピラミッドの流れに沿ってクリニックへ入職して定着します。
勤務医と開業医の最も大きな違いは、その責任範囲でしょう。
大学病院や総合病院で働く勤務医は、言うならば大手企業の従業員。一方の開業医は、中小企業のオーナーのようなものです。開業医は、医師であると同時に「経営者」になります。
勤務医は医療従事者として医療に特化した専門的な能力を求められ、それが評価されます。一方、開業医は地域に根差した医療を行い、自分のクリニックでは治療できない重症患者は大病院に紹介することで、クリニックと大病院では住み分けがなされています。