店舗であれば、通りがかりでたまたま立ち寄る衝動来店型と、目的を持って来店する目的来店型があります。
衝動来店型と目的来店型では、大きな違いがあります。
衝動来店型は、看板や店舗の外観を見て、衝動的にその店に行こうと来店します。
ショッピングセンターへ買い物に来ていて、買い物の途中にお昼ご飯のためにショッピングセンター内の飲食店に立ち寄るのは、衝動来店型になります。
目的来店型は、自宅や職場などで事前にその店に行こうと決めていて、その店に向かって来店します。
クリニックは体調不良になって病院探しを始め、いくつかのクリニックを比較検討して初診となります。
目的来店型になりますので、たまたまクリニックの前を通りがかり、衝動的にかかることはあまりありません。予約制であれば、電話やスマホで予約しなければいけません。
クリニック以外にも目的来店型の業種はあります。
自宅や職場で体調不良になって病院探しをする際に、ネットや口コミではなく、通りがかりで認知されたクリニックにたどり着くには、頭の中でその科目のクリニックの場所が想起され、確実にクリニックへたどり着く必要があります。
少なくとも科目と場所がしっかり記憶されていないと行くことができません。
クリニック名が覚えられていたら、診察時間や休診日も把握するために、ネットでクリニック名などで検索されることもあります。
覚えやすい立地のクリニックは、他人にも教えやすく口コミも広がりやすくなります。
目印となるランドマークがあるとよりよく、「スーパーの○○向かいにある…クリニック」などとと場所を伝えやすいです。
ネットで病院を探して来院される患者さまは、より多くのクリニックの中から選んで来院されます。
通りがかりで来院される患者さまよりも悩みが深い傾向にあり、そのため満足度が高まりくくクレームとなる確率も高くなりがちです。
また、ネットの方が遠方から来院されるため、それ以外の病気にかかった際のかかりつけになりにくい傾向にあります。
通りがかりの患者さまの方が診療に対して満足しやすく、近くに住んでいる可能性が高く、かかりつけになりやすい傾向にあるということになります。
既に開業している先生は、自分のクリニックを客観的に観察してみてください。人間は既に知っているものに目がいくのもので、つい自分のクリニックは通りがかる人に認知されやすいと思いがちです。本当に認知されやすい看板や外観でしょうか?
コンビニや大手ファーストフードなどのブランド力のある店舗であれば、場所が記憶されれば良いですが、クリニックに限らず今まで聞いたことのない名前の店舗であれば、クリニックの名前と場所の両方が記憶されなくてはいけません。自宅や職場近くにあるブランド力のない店舗をいくつ思い出すことはできますか?
開業志望の医師に、「内科(約6万軒)も歯科(約7万軒)を標榜しているクリニックの方がコンビニ(約5.5万軒)の数よりも多いです」というと、「そんなに多いのですか?」と驚かれるのですが、それだけコンビニよりも認知度が低いのがクリニックなのです。
コンビニはその地域において認知されやすい場所にあり、内科や歯科は認知されにくい場所で開業しているということです。
自宅近くのコンビニはいくつか思い出せても、内科や歯科はいくつ思い出せますでしょうか。
何年も前からクリニックを開業しているにもかかわらず、目立つ看板にリニューアルしたところ、患者さまから「最近クリニックできたんですか?」などと言われることもあるようです。
開業は立地が大事といいますが、私の母が開業しているのを見て、その重要性を思い知った実体験があります。
私の母は、眼科の開業医です。1980年代のバブル景気の頃に東京都内の住宅街で母は開業し、家賃相場が高かったせいか、最初の開業場所は最寄り駅から徒歩6分くらいのビル2階(30坪)でした。
商店街に面してはいたものの目立つビルというわけでもなく、なかなか認知されず、患者さまが増えるスピードはゆっくりでした。
患者さまが増えてきたため、10年ほど経って移転することになりました。
移転した場所は、最初の開業場所から徒歩1分ほどの距離にあり、最寄り駅から徒歩7分くらいの商店街に面していないビル1階(45坪)でコンビニの跡地でした。その頃にはバブル経済が崩壊して、家賃相場が安くなってきたことも移転する一因だったようです。
今でも覚えてますが、母が「1階に移転してから新規患者さんが増えたのよ。患者さんから前のビルのときは気づきませんでしたって言われるのよ」と、世の中に自分のクリニックの存在を知られるようになったことを喜んでいました。
その後も、新患は増え続けて、商店街の駅前徒歩1分くらいのビル1階(60坪)に移転し、またしばらくしてから、より広い1階(76坪)に移転しました。
良い場所に移転しては新規患者さんが増え、より良い場所に移転して新規患者さまが増えるということを繰り返してきたのです。
ホームページは24時間365日宣伝してくれるといいますが、好立地で開業することにより、クリニックの前を通りがかる人に対して、同じく24時間365日宣伝してくれることになります。
実際には夜間から早朝までの人通りがない時間を除き、休診日、診察開始前、診察終了後などの診察時間外にも通りがかる人に宣伝してくれます。
防犯上問題なければ、診療時間外にシャッターを下ろさなければ、クリニックのガラス面サインを見せることもできます。
シャッターを下ろす場合にも、シャッターにも科目名などを掲載しておくと宣伝になります。
看板はじっくり見られるものではなく、歩いてるときに目に入ったり、車で移動中に一瞬だけ目に入ったりするものです。
看板は一瞬で伝わり目立つことが重要で、目立たなければ気づいてもらえません。
クリニックを認知してもらうには、クリニックの名称や先生の名前よりも、まずは何科のクリニックなのかを覚えてもらうのが重要になります。
○○クリニックというクリニック名であったら、何科のクリニックかはわからないため、科目名がわかりません。
実際に、○○クリニックであっても、内科だけでなく、小児科、皮膚科、産婦人科、心療内科などであることもあります。 情報を羅列して文字を詰め込みすぎにも気をつける必要があります。
看板に書くべき内容には優先順位を付けることができます。
①科目
②クリニック名、階数(空中階の場合)
③予約制の有無、診療時間、定休日、電話番号
ファサード看板には①科目名や②クリニック名を書くことが多いです。
壁面やクリニック前などに看板を設置できないか、費用も含めて契約する前に交渉します。前のテナントが設置していた看板のみを看板設置できる場所と考えてしまいがちですが、可能な限り看板のスペースを大きく取ります。
看板を設置する際にも、デザインをビルのオーナーに確認しなくてはいけないこともあります。
ビルのオーナーとしては、クリニックの前に置くスタンド看板は正式には認めることができないが、黙認するという形が取られることもあります。
「社員はコストではなく資産である」という言葉がありますが、私はクリニックにとって、「看板」と「ホームページ」も資産であると考えています。
看板は将来患者さんになり得る通りがかりの人の脳の中に記憶という資産を、ホームページは、グーグルの検索結果上に資産を作ることができます。
そして、なにより最も大きな資産は院長である先生本人です。患者さまに信頼という資産を作ることになります。
物件を契約する際には、クリニックの診察室や待合室などのスペースとしてだけでなく、看板の設置をどこまでできるかどうかも確認します。
認知されやすい看板を設置できたとしても診療しにくい形だったり、診療しやすい形であっても認知されにくい看板しか設置できなかったりと、開業場所としては適していない場合もあり、総合的に立地を判断する必要があります。
書体によってもクリニックのイメージが変わります。書体に対するイメージは人それぞれでしょうが、一般的には、角ゴシック、丸ゴシック、明朝体などが使用されます。
角ゴシックは清潔感や誠実なイメージ、丸ゴシックは親しみのある柔らかいイメージを与えます。
クリニック名や科目名の一部を、漢字から平仮名にするのも柔らかさが出ます。
誰もが読める文字、書体で文字の間隔は文字の大きさの20%くらい空けると見やすいといわれており、情報量が多すぎても読みにくくなります。
色にもイメージがあり、飛び出して見える前進色、奥まって見える後退色があります。
前進色は、主に暖色系の色で膨張して見え看板が大きく見えます。後退色は、主に寒色系の色で収縮して見え看板が小さく見えます。
クリニック周囲の看板や建物と同化させないように、色を目立たせる必要があります。
青と白、緑と白がクリニックの定番になります。
青理知的、冷静、落ち着く
緑自然、平和、安心
赤情熱、元気、活動的
オレンジ楽天的、親しみ、明るい
ピンク女性、華やか、優しい
グーグルなどの検索エンジンで「クリニック+看板」などのキーワードで画像検索すれば、クリニックの看板が表示されます。気に入ったデザインがあれば、同じようなデザインをと伝えると良いでしょう。
ホームページと色や字体を合わせることもあります。クリニックのロゴも入れる場合もあります。
クリニックらしいデザイン(色や字体)にします。
デザイン性を重視して、読みにくくなり目立たなくなってしまう看板にならないよう注意が必要です。
通行量はある地点を通過する人の数、交通量はある地点を通行する車の数を指しますが、便宜上、通行量に統一して説明します。
基本的には通行量が多い方が、より多くの人に認知されやすくなりますが、通行人の将来患者さまになる確率も重要になります。
例えば、乗り換え目的で歩いている人と自宅の近くのスーパーに買い物に来ている人では、将来患者さまになりやすい確率は大きく異なります。
同じように買い物に来ている人でも、自宅近くのスーパーに買い物に来ている人と、電車に乗って遠くのショッピングセンターに買い物に来ている人でも異なります。
また、科目により年齢層も影響します。
通りがかる人の住んでいる場所や働いている場所、年齢も重要ということです。
看板が目立ち発見され、イメージの良いクリニックとして記憶に残ることが大事になります。
まず看板が発見される必要があります。逆にいうと、看板が発見されないと認知されることはありません。
一般的に、人は前を向いて歩いているため、道路と並行した看板は、通行人は正面に立って見る機会がなく、発見されにくくなります。袖看板がまず目についてファサード看板を見る流れになることもあります。
空中階であったら、1階や2階部分などの目立つ箇所に看板を出させてもらう必要があります。2階にあるクリニックでも、1階に目立つ看板があれば、1階にあると勘違いされることもあります。
2階への階段が道路に面した位置にあるなら、階段の入り口にも看板を設置します。
いくら発見されやすくお洒落なデザインにしても、わかりにくい、読みにくいなどのデザインであったら、記憶されにくいといえます。
外観のイメージとは、看板や外から見えるクリニックの外観(ガラス面や建物)の記憶されたイメージで、「清潔感がある」「小汚ない」、「新しい」「古くさい」などのイメージを持つことになります。
看板や外観が古くさいとどうにしても「診療も古くさい感じなのではないか?」と感じてしまいがちになります。
ファサードというのはフランス語で「建物の正面」という意味で、ファサード看板は、お店の顔となります。人の顔と同じようにファサードは見る人に強い印象を残します。
クリニックとして好印象を残す外観であることが望まれます。
看板の照明には、中にLEDの入っている内照式と、外から照らす外照式があります。夜間は内照式の方が外照式の方よりも目立ち、認知されやすいです。
特に夜に人通りがある場所であれば、内照式の方が良いかもしれません。
クリニックの入り口扉や窓などのガラス面にサインを貼りつけます。ガラスシートやウィンドウサインと呼ばれています。
1階であれば、ガラス面の上半分や一部などを空けておき、クリニック内の様子が見える方がイメージを持つことができます。
2階以上であれば、ガラス面いっぱいに背景となるシートを貼りつけ、文字を重ねて貼りつけることもあります。
建物自体の壁面に貼りつけた看板の総称を壁面看板と呼びます。パソコンでデザインしたものを大型インクジェット出力機で印刷します。写真を貼ることもできるようになりました。
柱や壁にもファサード看板と同じ色にすることにより、間口を大きく目立たせる方法もあります。
文字を立体的に加工した看板で、平面的な看板よりも一体感、高級感があります。
建物の壁面から突き出すように設置された看板を袖看板、突き出し看板と呼ばれています。道路と垂直に設置します。
道路より高い位置にあるため、落下することがないように強度を高める必要があります。
看板を横から見るとAの文字に見えることからA型看板と呼ばれています。
A型看板よりも設置のための面積が小さくて済みます。
クリニックの敷地内の土地に看板を立てる看板を自立看板と呼ばれることがあります。
ロードサイドにあるクリニックは、車を運転している人に認知されやすい自立看板を設置します。
クリニックの敷地以外の土地に看板を立てる看板を野立看板と呼びます。
単独タイプ以外にも集合タイプもあります。
〈 どんな種類の看板があるの?用途によって看板をご紹介! 〉
クリニック前の交通量が少ない場合には、交通量の多い道路に野立て看板を設置することもあります。
野立て看板を発見されて、矢印や何メートル先などの文言で誘導することになります。
野立て看板も費用がかかりますので、本来であれば、元々交通量の多い場所で開業するべきともいえます。
ポール看板は地面に埋め込む基礎工事が必要なため、費用がかさむ傾向にあります。
駅、電車、バス、タクシーなどの看板があります。
クリニック側で看板会社を指定することができず、費用がかさむ傾向にあります。
スマホの経路案内やカーナビによって、電柱などのクリニックまでの案内看板を見なくなりつつあります。
通勤や買い物で電車を待っているときも、ホームでスマホを見ていますし、カーナビにより、道や周囲の建物にも注意をしなくても、容易に目的地に着くことができるようになりました。
クリニック内で患者さまが迷わないように院内にもサインを設置する必要があります。看板制作会社がおこないますが、外看板と一緒に見積もりをしてもらいます。
患者さまからのスタッフへの質問も少なくなることでしょう。
・受付の位置
・院内のクリニック看板
・診察室の位置と番号
・処置室の位置と番号
・トイレの位置
看板制作会社はホームページ会社や印刷会社に比べて、営業活動に積極的ではなく、接点を持つことがあまりないでしょう。
そのため、どんな種類があるのか、価格がどれくらいか、どの会社に発注すればいいのかあまり知られていません。インターネット経由で問い合わせる、広告代理店や内装工事会社の下請けや紹介ということもあります。
インターネット経由で直接問い合わせる方が、費用的には安く済むかもしれません。
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