開業を希望する場所で、競合がいなければ理想ですが、残念ながらそのようなことはまずありません。
開業支援をしていると、開業志望の先生から「競合についてどのように分析すればいいか?」とよく相談されます。
競合クリニックの分析方法について具体的に説明します。
仮に、単科での開業の場合、近隣に競合となるAクリニックが1日70人、Bクリニックが1日60人の来院があったとします。
CクリニックがBクリニックの近くに開院して1日50人の来院があるとすると、Aクリニックは1日70人→60人、Bクリニックは1日60人→40人、その他のクリニック合計20人来院患者さんが減るという計算になります。
調剤薬局は各クリニックごとに、どれくらいの処方せんを受けているかデータを持っています。
製薬会社営業の方はそれを参考にして訪問先を選んでいます。
それにより、競合となるクリニックの1日当たりの患者数を把握することができます。
それ以外にも、予約システムを導入しているクリニックなら、ネット上で確認することができます。
少し勇気がいりますが、直接クリニックを覗いてみて、混雑具合や診察番号を把握する場合もあります。
あくまで目安になりますが、競合を分析するにも、通りがかりでの競合とネットでの競合の2つの軸があります。
競合との距離が近いほど通りがかりは競合します。
電車社会であれば、半径500m以内のクリニックが最も競合します。次に半径1㎞以内のクリニックが次に競合します。
車社会であれば、半径2㎞以内のクリニックが最も競合します。次に半径4㎞以内のクリニックが次に競合します。
認知度=通りがかりの人数×認知されやすさ
とすると、クリニック前を通る通りがかりの人数と認知されやすさも影響してきます。
ネットで「地域名+科目名」で検索した際に自然検索やグーグルマップで上位表示されているかどうかが基準になります。
開業する前に競合になると思っていた距離の近いクリニックとは案外競合にならず、ネットが強いクリニックの方が競合になるケースもあります。
グーグルでクリニック名で検索すると、検索結果の下の方に「他の人はこちらも検索」と、競合となっているクリニックのグーグルマイビジネスが表示されます。
近くで上位表示されているクリニックが最も競合になり、その次に近くで上位表示されていないクリニックと遠くて上位表示されているクリニック、遠くて上位表示されていないクリニックの順になります。
検索されやすいマイナー科目ほど、ネットの比率が上がる傾向があります。
グーグル検索で「地域名+科目名」のキーワードで検索すると、その地域におけるその科目のネット上での競争の激しさがわかります。
まずは、どれくらいクリニックの公式ホームページが自然検索結果に上位表示されているのかをチェックします。
1ページ目には1位から10位までが表示されますが、どれくらい競合となるクリニックの公式ホームページが表示されているかが指標になります。
やはり、競合が上位表示されていて、病院口コミサイトがあまり表示されていないと、その地域においてネット上での競争が激しいと考えられます。
競合数にもよりますが、特に1位から3位くらいまで全てクリニックの公式ホームページですと、より競争が激しいでしょう。
まずは、開院場所と競合クリニックの距離です。基本的には近ければ近いほど競合しやすくなります。近くても動線が異なると影響を受けにくく、逆に、遠くても動線が同じだと影響を受けやすいということもあります。
競合クリニックの評判を調べるのに、リアルの口コミとオンラインの口コミがあります。
リアルの口コミを知るには、薬卸や製薬会社の方に聞いてみる、実際に調査して通院している患者さまに聞いてみる、患者としてかかることなどがあります。
オンラインの口コミを知るには、グーグルマイビジネスの口コミと病院検索サイトの口コミに分けることができます。グーグルマイビジネスの口コミは削除されにくく、病院検索サイトの口コミは削除されやすいです。
競合クリニックの口コミを知るには、グーグルマイビジネスの口コミを調べると簡単に知ることができます。
しかし、競合の口コミを簡単に信じてはいけません。
口コミについてクリニック関係者やクリニック側から患者さんに依頼するなどして、意図的に良い口コミを増やしているケースもありますので、口コミの内容を精査する必要があります。
口コミを業者に依頼しているケースもあるようです。
あえて悪い口コミを依頼しているクリニックはないでしょう。
また、門前の調剤薬局に聞いてもクリニックの良いことしか言いません。
特に、マイナー科目になればなるほど、ネット力が影響していきます。
競合が開院することがわかり、焦ってホームページをリニューアルするクリニックもありますので、将来までネット力がずっと弱いとは限りません。
私も競合ができるからホームページをリニューアルしたいけど、どうしたらいいか」と相談されます。
競合クリニックの院長は、患者さんがリアルの口コミで来ていると思っていたら、ネット経由で来ていたということもありますし、競合クリニックの院長本人も把握していないこともあります。
競合クリニックのネット力を見極めるにはホームページが基本になります。
ホームページがないクリニック(医師会のクリニック紹介ページや病院検索サイトのページのみ)は、比較検討された際に選ばれにくいです。
ホームページが古くさいデザインで知りたいことが書かれていないクリニックも選ばれにくいでしょう。
ホームページ会社を調べることでどれくらいの質のホームページか予想できる場合もあります。
ネット力は3つの要素分けることができます。
「地域名+科目名」で検索してみて何位に表示されるか確認します。たまたま上位表示されている例もありますが、どれくらいネットに強いか類推することができます。
電車社会であれば、地域名は駅の名前になることが多く、例えば、新宿駅周辺のクリニックであれば、「新宿区+内科」ではなく、「新宿+内科」になります。
車社会であれば、地域名は市の名前にあることが多く、例えば、八王子駅周辺ではない八王子市内のクリニックであれば、「八王子+内科」ではなく、「八王子市+内科」になります。
グーグルマップの順位も自然検索の順位に大きく影響を与えます。
グーグルマイビジネスの口コミを返信しているところの方が、よりネットを意識しているといえるでしょう。院長が返信していた場合、返信内容により性格を知ることもできます。
「地域名+科目名」で検索して、表示されるか確認します。
広告が沢山出ていれば出ているほど、競争が激しくなるといえます。
グーグルとヤフーの広告システムは別なので、グーグルだけ出してヤフーは出していないこともあります。両方出しているクリニックの方が手強いでしょう。
〈 ネット集患については、
詳しくはこちらのページをお読みください。 〉
例えば、競合が内科を主たる科目で小児科も標榜している場合、ネットで小児科単科のクリニックはどれくらい影響を受けるのでしょうか?
現在のグーグルの仕組みでいえば、「地域名+小児科」や「小児科」で検索された場合、小児科を主たる科目のみを標榜していて、クリニック名に小児科が含まれているクリニックは、クリニックのホームページも小児科の内容のみのため、自然検索もグーグルマップ検索において上位表示されやすい傾向にあります。
「小児科」が含まれているのが最も上位表示されやすいですが、「こども」「チャイルド」などのクリニック名でも、検索結果に表示されたときにクリック率が高くなり、上位表示されやすい傾向にあります。
GPS機能がオンになっている場合などには、グーグルマイビジネスにおいては、内科を主たる科目で小児科も標榜しているクリニックの方が上位表示されることはあります。
逆にいえば、内科と小児科を診療しているクリニックであれば、「地域名内科小児科」とクリニック名をするのも選択肢になります。
ネットがクリニック名にも影響を与えている一例です。
その地域における競争の激しさとホームページの強さにはある程度の相関関係があります。
一般的に、競合クリニックに公式ホームページがない、もしくは、公式ホームページがあったとしても古くさい感じですと、競争が激しくない可能性が高いです。
どういうことかというと、ホームページを制作および管理するには費用がかかります。
ホームページがなくてもそれだけ患者さまが来院しているからこそ、ホームページの必要性を感じていないこともあります。
激戦区となり患者数が減ってきた→どうしたらいいのか考える→公式ホームページを作る→効果が出て患者数が増える→競合もホームページを作る→より競争が激化する→検索連動型広告を出稿するという流れになります。
開業支援をしていると、競争が激しくない地域ほど公式ホームページを持っていない確率が高い傾向にあることがわかります。
ホームページがないにもかかわらず患者さまが多いクリニックは、その分、グーグルマイビジネスの口コミは沢山ついていることもあります。
開業場所選びの1つの指標になるかもしれません。
ホームページが弱いというのは、具体的には、以下のような傾向があります。
競合が上位表示されるかどうかは非常に重要で、上位表示されていれば強く、上位表示されていなければ弱いということになります。
競合が意識しているかどうかを別にしても、上位表示されているクリニックのホームページよりも上位表示されるのは時間がかかります。
スマホ対応のホームページが増えてきたのは2015年くらいです。スマホ対応している方が見やすく来院率が高まるだけだけでなく、滞在時間やPVが伸び、上位表示されやすくなります。
どんなに良いホームページでも、10年したらリニューアルした方が良いでしょう。ホームページがないよりも弱いホームページがあった方がいいという考え方もあります。
競合の開院に合わせて、新しくホームページを作成されるよりいいかもしれません。
上位表示するための施策を怠っているというよりは、ホームページへの姿勢も読み取れます。
開業候補地の近くで競合になり得る患者数の多いクリニックがあったとします。そのクリニックが、通りがかり、ネット、口コミの3つのうちどの経路で患者さんが来院されているのか調査することも重要です。
需要が供給を上回っているから患者数が多いと思っていたら、実はそのクリニックがネットが偶然強く、ネット経由で来院されているというケースもあります。
実際に現地を訪れて、なぜそのクリニックの患者数が多いのかも調べる必要があります。
一旦その場所で開業すると、自分か競合の少なくともどちらかが移転するか引退するまで、競争していくことになります。競合クリニックの子供が後継者となり、親子2代にわたることもあります。
その地域において医療ニーズは一定ですので、競合が開業することによって既存のクリニックが患者数を大きく減らすことになります。そのため、競合クリニックと関係が悪化しているクリニックも少なくないです。
基本的には、競合と敵対するよりも融和していく方が相手の競争心をやわらげることができますし、その方向性が良いでしょう。
最初はお互い患者さんが多く融和していたとしても、競合が増えてしまい敵対関係に変化してしまう場合もあります。