医療モールには、内科や歯科以外にも、整形外科、耳鼻咽喉科、眼科、小児科、皮膚科、心療内科など各科が入ります。大型医療モールであれば、内科が2科目(消化器内科と循環器内科など)入ることもあります。
一般的には、医療モールを運営する会社や調剤薬局が、医療モールを計画しクリニックを誘致します。
医療モールを運営する会社や調剤薬局が、ビルのオーナーからビル一棟やワンフロアーを借り上げることもあれば、ビルのオーナーとクリニックが契約することもあります。
基本的には、クリニックが発行する処方せんの枚数が多ければ多いほど、調剤薬局は利益が増えます。
調剤薬局としては、医療モールにはより多くの医療機関を誘致して、処方せんの枚数を増やしたいということになります。
そのため、オーナーから借り上げた家賃よりも安い費用でクリニックに貸すこともあります。その分、調剤で利益を出すという収益構造です。
同じ科目で申し込みが複数あった場合には、患者さまが増えそうな方の医師が選ばれることもあります。
逆にいうと、そんなに医療需要がなくても、医療モールに一旦クリニックが入ってしまえば、調剤薬局としては一定数の処方せんが出れば安泰です。
関東地方の新興住宅地のある地域では、数年以内に医療モールが駅周辺だけで5個ほど計画されている場合もあります。
そこの調剤薬局の関係者は、「そんなに患者さんが来る立地ではないけど、ドクターの開業したいニーズがあるから計画している」と、同業他社にこぼしていたそうです。
もし本当に優良物件であれば、医療モールを運営する会社が経営するよりも、ビルのオーナー自身が各科目のクリニックと調剤薬局を誘致するのが一番利益になると思うのですが、なぜそうならないのか疑問です。好立地であれば、大手の不動産ポータルサイトに掲載すれば、各科目の開業志望の医師から、直接問い合わせがあるでしょう。
まずは、医療モールのメリットを挙げます。
医療モールとして主要科目が揃っていれば、患者さまからすると、あそこに行けば科目が揃っているという安心感があります。他の科目でかかった際にもクリニックを認知してもらいやすくなります。
領域が重なる病気であっても、同じ医療モール内の医師と一緒に診療したり、モール内で相互に紹介したりすることができます。
複数の病気でクリニックにかかる場合、ワンストップでかかることができます。全てのクリニックに在庫があるので、調剤薬局もワンストップできます。
特に、車社会で車を1ヶ所に置いたままかかれるのはメリットでしょう。
医療モールのため、調剤薬局が家賃を多めに負担してくれた場合、相場よりも家賃が比較的安いこともあります。
次に、医療モールのデメリットを挙げます。
小児科と耳鼻咽喉科、内科と耳鼻咽喉科、皮膚科と小児科(小児皮膚科)などで医療モール内での競争が起こってしまうこともあります。
風邪はどのクリニックが診察するのか、子供はどのクリニックが診察するのか事前に取り決めることもあります。
医療モール以外の他科クリニックからは紹介されにくくなります。
その地域において科目ごとに競合の数は異なり、ある科目は不足しているものの、ある科目は飽和していることもあります。
調剤薬局は無理にでも計画の全科目を揃えたいという思惑がありますので、需要があまりない科目も誘致してしまう可能性もあります。
医療モールによっては、空調設備や排水管の設置は、ビルの所有者や医療モールを運営する会社の指定業者でなくてはいけないこともあるので、その分、工事費用が割高になるケースもあります。
特に新築の医療モールでは、5年間や10年間などの長期間の契約となり、移転できないこともあります。想定より患者さまが来院されなかったり、患者さまが増えすぎてしまったりしても、移転した場合は、契約終了までの期間の家賃を払わなくてはいけないこともあります。
入居しているクリニックが繁盛している医療モールもあれば、苦戦している医療モールもあります。
競合がいない地域以外では、電車社会において、複線や規模の大きな駅から徒歩5分以上(単線の駅なら3分以上)の空中階にあるクリニックモールは、2階でよほど視認性が良い例外はあるにしても、苦戦しやすい傾向にあるようです。
医療モールを運営する会社や調剤薬局がホームページ、ネット広告、紹介などで、開業志望の医師を誘致しますので、人気のあるモールは入居が始まる前に決まっていて、決まらないモールにはわけがあることもあります。
患者さんが見込める医療モールでは家賃が高めの設定であることもあるようです。
中には、募集を開始したものの、開業志望の医師が集まらず、医療モールの計画が中止になることもあります。
なかなか決まらないため、家賃を安くしてもらうなど入居条件を良くしてもらうこともあるようですが、だからといって良い立地とは限りません。
5科目ほどが入居するクリニックモールができるという触れ込みで、1番最初に手を挙げて胸を弾ませていたら、実際には、ご自身ともう一軒だけしか開業しなかった事例もあります。
ただ単純にクリニックが集まらないのは、医療モールを適していない立地に医療モールを計画してしまったというケースも少なくありません。
表立っては募集はしないで、知り合いの医師に話を持っていき、ある程度申し込みが集まったら、計画を発表することもあるようです。
基本的には、医療モールだからといっても大きく変わらず、電車社会、車社会で繁盛する立地と同じです。
電車社会で開業する場合は、空中階になりますので、少なくとも複線や規模の大きな駅から徒歩3分以内(単線の駅なら1分以内)の認知されやすい空中階であるべきでしょう。
競合となるクリニックが1階では開院できないほど1階の家賃が高い場所が良いということになります。
医療モールだから入居したいというよりも、医療モールでなくてもそこで開業したいというくらいなのが、理想になります。
6. 競合クリニックの分析方法