クリニックを開業するにあたり、繁盛する立地というのは、色々な考え方があるでしょうが、私は「需要が供給を上回る地域」「競合が弱い地域」「認知度が高い場所」の3つの要素が重要であると考えています。
電車社会(主に徒歩で患者さまが来院)か車社会(主に車で患者さまが来院)に分けることができます。
徒歩1分=約80m 自転車1分=約200m 車1分=約400mが目安であり、通常、患者さまの多くは自宅から5分から10分以内でクリニックを探しています。
電車社会であれば、クリニックを中心とした半径500mから1㎞前後以内、車社会であれば、半径2㎞から4㎞前後以内が、患者さまが来院する診療圏の目安になります。電車社会と車社会の中間では、自転車でも来院されます。
開業後に患者さまの保険証に書いてある現住所を地図にプロットすれば、概ねその範囲内に収まります。
なぜ、患者さまは現在地近く、つまり自宅や職場近くのクリニックにかかろうとするのでしょうか?それには、いくつかの理由が考えられます。
・体調不良で移動に時間をかけたくないため
・何度も通う必要があるため
・近くの方が歩き慣れている、運転慣れしているため
などの理由があります。
風邪気味のため、電車で行かなければいけない地域や車で30分以上かかる地域で一般内科を探す人はまずいないでしょう。
開業場所の候補地は、電車社会と車社会では大きく異なります。
電車社会は人が最も集まる駅を中心とした「円」の範囲が、開業場所の候補になります。一般的に、駅中心に近いほど人が集まりやすく、家賃も高くなります。
車社会は車が最も集まる幹線道路を中心とした「線」の範囲が、開業場所の候補になります。交通量が多い幹線道路ほど車が集まりやすく、家賃も高くなります。
大きく分けると通勤していない人と通勤している人に分かれます。
通勤していない人というのは、仕事をしていない高齢者や主婦、自宅で仕事をしている人で、自宅や自宅近辺で生活しています。
通勤している人というのは、自宅以外で仕事をしている人、学生(中学生から大学生など)で、自宅や自宅近辺、仕事をしている時間帯(多くの人は9時~18時頃)は職場にいます。
体調不良になるタイミングは日中でも夜間でも時間を選びませんので、通常、体調の悪くなったタイミングで病院探しをおこないます。
少しくらいの体調不良であれば、通勤するかもしれませんが、仕事を休み自宅で休んでいる人が多くなることから、職場近くで病院探しをする人は比較的症状が軽い傾向にあります。
年齢ごとにどれくらいの確率でクリニックにかかるか(受療率)は決まっていますので、住んでいる人や働いている人の数と、年齢を調べることにより、おおよその需要、その地域における患者数を把握することができます。
需要(その地域における患者数)と供給(その地域におけるクリニック数)のバランスがありますので、いくら需要がある場所であっても、クリニックが多ければ1クリニックあたりの平均患者数は少ない傾向にありますし、あまり需要がない場所であっても、クリニックが少なければ1クリニックあたりの平均患者数は多い傾向にあります。
その地域における患者数÷その地域におけるクリニック数=1クリニックあたりの平均患者数という式が成り立ちます。
需要が供給を上回るかどうかの目安は、その地域のクリニックに来院する患者数を調べれば、だいたいわかります。そのような地域は、1クリニックあたりの患者数が多い傾向にあります。
どんなに評判が良いクリニックであっても、近くに競合クリニックが多ければ、患者さまは分散します。
逆に、評判が悪いクリニックであっても、近くに競合クリニックが少なければ、患者さまは集中します。
需要が供給を上回る地域が良いということになります。
全国平均の1年当たりの転居率は5~10%前後といわれ、持ち家比率が低い地域ほど転居率が高くなる傾向にあります。
その地域にいくつかの競合があるわけですが、その地域における競合が強いよりも弱い方が良いということになります。
競合を評価するにあたり、新規患者さまの来院経路は、立地的には通りがかりとネットの2つの観点に分けることができます。
1日の新規患者数=通りがかり+ネット+口コミ
と公式が成り立ちます。
1日の新規患者数から、科目や医師の能力によりどれくらいリピートがあるかを含め、将来における1日の総患者数を推定することができます。
通りがかりという観点でいえば、競合は認知度が高いクリニックよりも、高くないクリニックの方が良いということになります。
ネットという観点からいえば、競合はネット力があるクリニックよりも、ないクリニックの方が良いということになります。
高齢の開業医はネットに詳しくないことが多く、ホームページがなかったり古くさかったりすることもあり、競合と差がつきやすい要素です。
良い悪いは別として、ネットという軸においては、世代によって強い弱いの傾向があります。
立地とはあまり関係はありませんが、競合クリニックの評判(リアルや評判などの口コミ)も評価するべきことです。
いくら需要が供給を上回り競合がいなくても、その地域に住んでいる人もしくは働いている将来患者さまになり得る人に認知される場所でなければ、通りがかりでクリニックを覚えてもらうことはできません。
全く認知されなかった場合には、ほぼネット経由のみでの来院になってしまい、将来的には競合クリニックが認知されやすい場所に開院しやすい状況を作り出しているともいえます。
たまたまクリニックの前を通りがかり、そのときにクリニックの存在を知るだけでなく、何科のクリニックなのかも含め知ってもらい、体調が悪くなったときに「あそこにクリニックがあった」と思い出してもらえるくらいに、覚えてもらう必要があります。
その地域における認知度が高い場所、通りがかる人数が多く認知されやすい場所で開業した方が良いわけですが、以下の式で説明することができます。
認知度=通りがかる人数×認知されやすさ
単純に通りがかる人数においては、電車社会であれば駅近く、車社会であれば幹線道路沿いが多いでしょう。
時間帯により通りがかる人数は異なるでしょうが、1分間に歩きで何人通るか、車で何台通るか自分でも調べることはできます。
駅や幹線道路以外にも、顧客誘導施設といわれるスーパーやショッピングセンターも人が集まりやすく、通りがかる人数が増える傾向になります。
人の流れを作り出す場所を交通発生源、TG(トラフィック ジェネレーター)とも呼ばれています。
住んでいる人はその街にある駅、スーパー、大型ドラッグストア、100円ショップ、遠くにあるホームセンター、家電量販店、百貨店などに買い物に行くため、交通発生源となりやすい場所です。
歩いている人や車を運転している人は、横断歩道や交差点で信号待ちのため止まっているため、クリニックが認知されやすいポイントになります。
車社会のショッピングセンターにおいては、駐車場も交通発生源となり得ます。
物件は医療機関だけでなく他の業種と入居を争うことになります。
飲食店、ファーストフード、コンビニ、ドラッグストア、携帯ショップ、美容室、理容室、マッサージ、広めの物件なら、ファミリーレストラン、100円ショップなどが競争になります。
都心の再開発などをしている一部の地域を除き、将来的には人口は減少し、アマゾンや楽天などのインターネット上での物販やサービスがより普及していき、必要な店舗は減るため、家賃は相対的に下がっていく可能性が高いでしょう。
今後、クリニックも好立地に新規開院していくと予想されます。
認知されやすさというのは、通りがかってどれくらい人に覚えてもらえるかが指標になります。
同じビルであっても1階と2階と3階以上では認知される、覚えてもらえる度合いは大きく異なります。1階を10とすると、2階は3、3階以上は1といわれています。
同じ場所にあったとしても、目立つ看板を設置できるかによっても認知されやすさは異なり、間口が広い方が狭いよりも認知されやすい傾向にあります。
マクロ的には日本国内の人口は減り外来患者数は減っており、開業医の人数は増えているので、競合が増える可能性はあっても、極端に減る可能性は低いでしょう。
将来を予測するには以下のような点がポイントになります。
マンション建設などの大規模な再開発する計画があり将来的に人口が増えていく地域では、医療需要も増えると予想されます。
今後、需要も増えることにより競合も増える確率が高くなります。
逆に、人口が減っていく地域では、医療需要は減ると予想されます。
今後、需要は減ることにより競合が増える確率が高くはありません。
人口動態により、ある程度将来を予想することができます。
需要と供給のバランスが同じくらいの地域であれば、開業医にとって人気のエリアなら競合が増える確率が高いでしょうし、人気がないエリアなら競合が増える確率が高くないでしょう。
近隣に開業できる物件(20坪以上50坪以下)が多ければ、競合が増える確率は高いでしょうし、近隣に開業できる物件が少なければ、競合が増える確率は高くないでしょう。空き物件の多さも影響します。
競合クリニックの院長が高齢なら、後継者がいるのかも調べる必要があります。
競合の院長が高齢で看板や外観も古い感じだったのが、後継者が引き継いで、看板、内装、ホームページを新たにリニューアルし、競合の患者さまが増えることもあります。
いない場合は、閉院されるのか第三者に継承されるのかを知るためにも、売買される価値のあるクリニックなのか現在の患者数なども調べます。
集患のための立地選びにおいて、通りがかりで集患しやすい立地と、ネット集患しやすい立地の2つの軸で考えていくことが重要です。
通りがかりで集患しやすい立地という観点でいえば、認知度の高い立地が良いということになります。
電車社会であれば駅近くで人通りが多く認知されやすい1階は、駅近くではなく人通りが少ない空中階よりも良く、車社会であれば車の通りが多く目立つ場所にあるロードサイドは、車の通りが少なく目立たない場所にあるロードサイドよりも良いということになります。
ネット集患の観点でいえば、電車社会であれば、駅近くがいいでしょうし、車社会であれば、車を停めやすい駐車場が必要となります。
特に、電車社会で電車に乗って遠方からの来院があるなら、駅から近い場所の方が来院率は高まるでしょう。
初めて来院するときに、目印になる建物や入り口のわかりやすさなどは大事ですが、必ずしも認知度が高い場所である必要はなく、1階であることが良いわけではありません。
ネット集患のみの科目以外では、通りがかりとネットの両方の要素が必要になりますので、2つの要素を元に、家賃などを含め総合的に立地を判断する必要があります。
ネット集患のみの科目では、通りがかりで認知される駅近くの1階である必要はなく、認知されにくい駅近くの空中階の方が家賃が安いのでよいということもあるでしょう。
〈 ネット集患について、詳しくはこちらのページで説明しています。 〉
標榜しているクリニックの数からすると、内科は約6万軒、小児科は約2万軒あり、クリニックの数が多いので、その分、通りがかりでクリニックを認知しやすい傾向にあります。
小児科、皮膚科、整形外科、眼科、耳鼻咽喉科などのマイナー科目は、クリニックの数が少ないので、通りがかりでクリニックを認知しにくい傾向にあります。
消化器内科、呼吸器内科などの内科各分野に専門特化しているクリニックも同様です。
その分、体調が悪くなったときにそれらの科目を診療しているクリニックが想起されることはその分少なく、結果として「地域名+科目名」で、ネット検索してクリニックを探すことになります。
マイナー科目は、内科の5分の1~10分の1くらいしかクリニック数がありませんので、当然といえば当然です。
精神科、美容、産婦人科、泌尿器科などは、クリニックの数がより少ないので、ネット経由での来院がほとんどになることもあります。
また、それ以外の来院経路としては、クリニックから、より専門性の高いクリニックや手術設備のあるクリニックへの紹介もあります。
検索ボリュームが大きい地域ほど、ネット上での競争が激しく、上位表示されれば患者さまは集まりますが、競合も多い傾向にあるので、難易度が高くなります。
住む場所は、自分のライフスタイルだけでなく、家族がいれば、配偶者や子供の人生に少なからず影響を与えることでしょう。
小さいお子さんがいれば、通う学区の公立小学校や中学校がどのような雰囲気なのか気になるかと思います。中学受験や高校受験する際には、通学が可能なのかどうかなど、交通の便なども関係します。
自分および配偶者の両親、友人がどこに住んでいるのかも大事なことかもしれません。
もし自宅を購入するなどして引っ越しできないなら、自宅からドアトゥドアで30分以内(遠くても1時間以内)で行ける場所が候補地になります。
自宅を購入していないなら、自分が開業したい地域や住みたい地域が基準になります。
まずは、需要が供給を上回る地域で、相対的に競合が弱い地域をリストアップします。
頭の中だけでなく、紙やメモにリストと競合を書くとより良いです。開業場所の選び方というのはそれだけ大事なことなので、手間をかけるべきです。
いくつかの候補地が決まったら、グーグルマップなどで検索して、その地域にある不動産屋を探し、不動産屋に名刺を持って行き、自分のメールアドレス(必要なら携帯番号も)、坪数や家賃の希望条件を伝えます。
例としては以下のような条件になります。
〇〇駅徒歩3分以内の1階
20坪以上30坪未満
メールアドレス
電話番号
〇〇市内のロードサイド1階
30坪以上60坪未満(駐車場含む)
メールアドレス
電話番号
多くの不動産屋に行くことが大事ですが、店舗の管理物件が多そうな地元に根づいた不動産屋さんの方がよりよいかもしれません。
地域を歩いてみてテナント募集している空き物件があれば、直接管理会社に連絡します。
家賃だけでなく共益費もチェックします。
前テナントの退去時期により、クリニックの工事開始日や開業日が影響します。どのような業種であったかも参考になります。
1階であっても少し奥まっていることもありますので、グーグルストリートビューなどで確認します。
クリニックの場合、少なくとも、受付、診察室、処置室、待合室、トイレ、更衣室、休憩室が必要になります。
それ以外にも、検査室や手術室なども必要になることもあります。診察室やトイレの数も広さによって変わります。
医師1名、看護師1名、医療事務2名ほどの一般内科の1日40人ほど来院がある標準的なクリニックであれば、クリニックの面積は20坪前後で十分でしょう。
医師2名、看護師2名、医療事務3名ほどの一般内科の1日80人ほど来院があるクリニックであれば、クリニックの面積は30坪前後で十分でしょう。
立地と少しずれますが、スタッフも最小限で開院して、徐々にスタッフの人数を増やしていく方が合理的です。
季節要因を除けば、開業1年目が最も患者数が少なく、徐々に患者数が増えていき、5~10年前後でプラトーになります。
開業したばかりに看護師は本当に必要でしょうか?自分で採血や点滴をして、必要になったら雇用すると良いかもしれません。「最初から看護師を雇用しないのは格好悪い」という気持ちもわからなくもないですが、合理的に判断することも大事かと思われます。
以下は患者数と医療事務、看護師の雇用する人数の目安になります。
開業1年目 10人 医療事務2名 看護師なし
開業2年目 20人 医療事務2名 看護師なし
開業3年目 30人 医療事務2名 看護師なし
開業5年目 40人 医療事務2名 看護師1名
開業1年目 20人 医療事務2名 看護師なし
開業2年目 40人 医療事務2名 看護師1名
開業3年目 60人 医療事務3名 看護師1名
開業5年目 80人 医療事務3名 看護師2名
同じ面積でも柱の位置や段差の有無により、クリニックとしての診療のしやすさは異なります。
最初はクリニック内に更衣室や休憩室に作り、医師を雇用して2診体制にする必要が出てきたら、更衣室や休憩室は近くに更衣室、休憩室、倉庫として事務所やマンションの一室を借りるという方法もあります。 マンション一室のワンルームであれば、10万円以内で借りることができます。
診察室に変更できるような間取りにしておくと良いでしょう。
効率的に診療する体制を構築するために、2つの診察室を行き来して、各診察室のスタッフが患者さまの事前の問診や診察時の電子カルテの入力をおこなう方法もあります。人件費が2人分多くかかりますが、その分多くの患者さまを診療できますので、そのように最初から診察室を作るケースもあります。
天井高が低すぎると圧迫感があります。逆に、天井高が高すぎると解放感があってよいのですが、冷暖房の効率が落ちます。
レントゲン室を設置する場合には、放射線を通さない壁を設置することになります。
基本的には、受付は入り口の近くになります。
同じ面積でも形によって、クリニックとしての診療のしやすさは異なります。
待合室(イスと患者さま側の通路)、診察室、バックヤード(スタッフ側の通路)が確保できる形かどうかも確認します。
物件を引き渡される際の状態により、スケルトンと事務所仕様に分けることができます。
スケルトンとは、床、壁、天井が何もなくコンクリートがむき出しになっている状態です。事務所仕様は事務所のように空調、天井、床、トイレなどがある状態です。
事務所仕様であれば、空調やトイレなどを設置する必要がありません。
保健所の指導により、手洗いをするためのシンクを設置する必要があります。
手洗いやトイレを設置するには排水の設備が必要になります。
排水は高いところから低いところにしか流せないため、床に傾斜がない場合には手洗いやトイレを設置するために、床上げをするために段差ができてしまうこともあります。
看板をどの位置に設置することができるか確認します。ファサード看板、壁面看板、袖看板、置き看板、野立て看板などがあります。
入り口に段差や障害物があると、患者さまがつまづいてしまったり、クリニック自体が目立たなくなってしまったりします。
セットバックしていると、認知されやすさが下がります。
同じビルの上下階、左右のテナントを匂い、騒音がないかなど確認します。
電車や車が通る音や振動がクリニック内で聞こえないかもチェックします。音が気になる場合には、音楽を流すなどの対策をします。
日中内見して、問題がなかったとしても夕方以降、近隣の飲食店の音や匂いが気になってしまうこともあります。
時間帯によって営業している店が異なりますので、周りのテナントに問題ないかどうか営業時間含め確認しておくと良いでしょう。
自転車置き場がなく、クリニックの前が通りにくくなってしまった場合など、近隣の住民とトラブルになることもあります。
特に、電車社会と車社会の中間の地域では、自転車による来院比率が高くなります。
車社会において駐車場の数や駐車しやすさは重要です。
車が道路から駐車場に入る、駐車場から道路に出るための間口は6m以上あった方が良いといわれています。
クリニックで発行した処方せんを薬に変える必要があります。患者さまは調剤薬局に行く必要があるため、近所に調剤薬局がない場合は満足度が下がってしまいます。
保証金(敷金)として何ヶ月分(家賃の6ヶ月分~10ヶ月など)かオーナーに預け入れる必要があります。
契約開始時期と契約期間、家賃は何月何日から発生し、工事は何月何日から開始可能なのかを確認します。
普通借家契約もしくは定期借家契約なのか確認します。
普通借家契約の場合、貸し主側(オーナー)に正当な事由がない限り、契約は更新されます。借り主(クリニック)が入居し続けることを希望していれば、貸し主側が契約を解約したくとも、更新を拒否することはできません。
定期借家契約の場合、契約で定めた期間が満了を迎えると、契約は更新されることなく契約が終了します。
契約期間以降も借り主(クリニック)が入居し続けることを希望すれば、貸し主(オーナー)と再契約する必要があります。
基本的には、クリニックにおいては定期借家契約しない方がいいと考えています。
オーナーとしては、定期借款契約であれば、問題があるテナントを追い出すこともできます。
建て替えを検討しているビルであれば、建て替えのためビルを取り壊す際にも、営業補償費用などを支払わなくてもすみます。
都心を中心に定期借家契約が増えています。定期借家契約はなんらかの事情で契約が解除されてしまったら、別の場所に移転しなくてはいけません。
移転後のクリニックに内装費用がかかりますし、移転前のクリニックを原状回復する必要があります。
定期借款契約が10年間以上であればまだしも、5年ほどであればあえて定期借款契約の物件を選ぶ理由はないのかもしれません。
私の運営する新宿駅前クリニックも、定期借家契約だったため、契約更新の際に坪18000円から坪24000円に値上げされたこともあります。
その5年後に、入居していたビルが大手家電量販店に売却されてしまい、ビルを取り壊すことになったため、坪30000円の近くのビルに移転しました。
定期借家契約でも大きな値上げもなく再契約しているクリニックもありますが、私自身も定期借家契約には痛い目にあっています。
支払い日、支払い方法(銀行振込みなど)を確認します。
更新料と更新の時期をチェックします。
退去日の何ヶ月前に解約を申し出る必要があるかも把握しておきましょう。
原状回復はどこまでする必要があって、原状回復工事業者の指定はあるのかも確認しておきます。
当然ですが、コンサルタントは開業支援をボランティアでおこなっているわけではありません。経済的な利益があるからこそ開業支援をおこなっています。属人的な要素が大きいため、会社の中でも評判の良いコンサルタントに担当してもらいたいものです。
また、コンサルタントの母体によって以下のような傾向があります。
よく勘違いしている開業志望の先生が多いのですが、開業後に医薬品を購入してもらえるからという点だけで、開業支援をしているわけではありません。
医薬品卸から医療機器、内装などの会社を紹介されれば、医薬品卸に紹介料が発生するため、費用が上がってしまいます。
そんな私も紹介料が発生することを知らずに開業しました。勘違いしていたのです。
医療モールであれば、紹介料が発生します。
さすがに開業後すぐに別の医薬品卸に変更するのはよくないと思いますが、複数の医薬品卸で相見積もりをするべきでしょう。
調剤薬局の近くや調剤薬局が入居する医療モールに誘致することになります。
複数の科目を標榜して、医療モール内に科目がかぶってしまうようなら、医療モールには入居しにくいでしょう。
開業候補の地域に既にある調剤薬局があれば、協力していただけないか相談することもあります。
開業支援を依頼すると、費用が発生します。紹介料をもらわないことを約束してコンサルティング契約するケースもあります。コンサルティング会社は専業でおこなっているため、事例が豊富です。
開業支援をおこなう税理士事務所もあります。税理士事務所側としても、開業支援をおこなうことにより、開業後の顧問契約も獲得できます。
個人的な意見としては、医療機器や内装などにお金をかけるなら、できるだけ低価格で購入するために、コンサルティング会社が良いかもしれません。逆に、開業場所が決まっていて、特別なノウハウが必要でないなら、医薬品卸や税理士事務所で大きな問題はないでしょう。
私はコンサルタントとして最も重要なのは立地選び、患者さまが見込める物件を見つけてきて立地を選定することにあると考えています。その立地でどれくらい患者さんが見込めるのか、家賃は適正なのかも含めて評価する必要があります。
色々細かく書きましたが、より簡易的な開業場所の選び方としては、電車社会であれば、需要が供給を上回る地域で駅から徒歩3分以内の1階、車社会であれば、需要が供給を上回る地域で大手チェーンが出店しているロードサイドが基本ということになります。
それぞれ電車社会と車社会に分けて、具体的にどのような立地がよいのか分析しました。
2. クリニックの立地は、