病院選び、医者選びをおこなう前に、知っておくべきことをお伝えいたします。
テレビやウェブメディアではなかなか語られない、医療関係者でないとわからない病院・医者業界の特有のシステムもあります。
また、1人1台スマホを持つようになり、医療情報にアクセスできるようになりました。上手にインターネットも利用することにより、病院選びの方法も変わりつつあります。
ネットが発達する以前は、家族・友人・知人がこの病院は評判が良い、悪いなどの情報を聞いて、「この病院は安心だろう」と考えて病院を選んでいました。それ以外にもテレビ、新聞、ラジオ、雑誌などのマスコミ、具体的には、テレビの特集や、病院ランキングの雑誌なども評価の基準でした。
現在では、それらだけでなく、ネットで情報収集して病院を選ぶようになりました。
口コミの信憑性が高い。
感じ方に個人差がかなりある。
頻度の高い特定の病気に限られやすい。
情報量が多い。
リアルの口コミよりも、多角的に評価できる。
誰が書いたかわからない。
口コミがステマや嫌がらせのこともある。
病気の特集など啓蒙活動としては、意味がある。
雑誌だと良い情報しか書かれていない。掲載料金を支払って掲載してもらう場合や記事広告のことも少なくない。
取材を受けたがる医師が出やすく、そうでない医師の情報は出てこない。
大学病院や総合病院などにおける手術数など詳しく掲載されている。
どの先生が何例実績がある、良いかまでは書かれていない。
力を入れいている科目がわかりやすい。
広告規制があるため、掲載していい情報が限られている。
情報が少ないため、かかりつけ医の紹介する近くの大学病院や総合病院、出身大学の病院に紹介されていました。良い悪いなどの口コミは、多くは別の科の医師の評判であるわけで、病院のブランドで決めていました。
そういった病院に対する評判は、当てにならないとは思いませんが、医療は属人的な要素が大きく、色々な医師がいますから、良い評判の病院で期待していたのに、外れな医師だったり、逆に、いまいちな評判の病院で全然期待してなかったのに、良い医師だったりしていました。
ホームページで情報を収集するだけでなく、ランキング本などを参考にして、その病気に対して、どの病院がどれぐらいの人数を治療したことがわかるようになりました。それは画期的なことで、その情報を元に、病院のその科のホームページを見て、医師を選ぶことができるようになりました。
また、インターネット上での口コミも調べることができるようになりました。もちろん、ネットではいいことがかかれていても、実際にはそうでもないこともあるかもしれませんが、以前よりも選択肢が増えて、自分に合った病院を選びやすくなりました。
ネットが苦手なら、子供など親族がいれば、若い世代の人に調べてもらうのも選択肢の一つです。調べてまとめてもらえば、自分はその情報を読んで知識を得ることができます。
大きな病気になって気持ちが不安定なときに、本やネットで調べたくないという場合もありますが、近しい人の力を借りることは頼りになります。ネットで医師の評判などの口コミがあれば、評価がある程度わかる場合もあります。
医療機関の分類については色々な分け方がありますが、大きく分けると、診療所(クリニック)と病院に分けられ、病院も特定機能病院、地域医療支援病院、一般病院などに分けられます。
わかりやすく、クリニック、大学病院、総合病院、専門病院に分けて説明します。医療法では、ベッド数が病床数20床以上を「病院」、19床以下を「診療所」として分類されています。2018年1月の厚生労働省の発表によると、病院と診療所(クリニックや医院)を合わせた医療機関の合計数は17万9,029施設です。
そのうち、病院は8,401施設、診療所(クリニックや医院)は17万628施設(一般診療所(内科、小児科、整形外科など)10万1,837施設、歯科診療所68,791施設)で、日本のほとんどの医療機関は診療所であることがわかります。大学病院も総合病院も専門病院も上記の8401施設に含まれています。
診療所は増えており、開業医は増え続けています。国の政策もあり、中小の病院は減っていて、ベッド数が多い大病院に集約化される傾向にあります。
クリニックとは、病床数19床以下の診療所のことになりますが、ほとんどのクリニックでは、入院できる設備はなく、CTやMRIなどの高度な医療機器は設置されていません。
いくら優秀な医師でも、診療所では検査機器や医療機関が整っていないことで、診断がつかないこともあります。その際は、精密検査ができる病院に紹介することになります。
他の病院に紹介したがらない、抱え込み過ぎるかかりつけ医は良くないと言われることもありますが、適切なタイミングで紹介してもらえるのかは、素人にはわからないのが、難しいところです。
大学病院とは、医学部などがある大学の研究や教育をおこなう位置づけの病院のことで、本院と分院合わせて全国に160強ほどあります。●●大学医学部附属病院などの名称の大学病院もあります。高度な医療機器が揃っています。
〈 参考資料はこちら 〉
総合病院とは、病床数100床以上で主要な診療科(最低でも内科、外科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科の5科)を含む病院のことで、1000床以上ある大きい総合病院もあれば、300床以下の小さい総合病院もあります。
各科専門が分かれており、診療所などよりも高度な医療設備が揃っています。総合病院といっても、病院ごとに力を入れている科、入れていない科があることもあります。できれば、力を入れている科でかかりたいところです。
専門病院とは、明確な定義はありませんが、がん専門病院、小児専門病院、循環器専門病院など、ある領域に専門特化している病院です。全体のベッド数が少なくても専門領域については、大学病院以上に専門とする医師が多いケースも少なくありません。
大学病院では、医局に入って、研究し論文発表中心に、臨床もしている医師は、研究に興味がある場合が多いです。医局に入らず、総合病院に就職した医師は、研究ではなく臨床に興味がある傾向にあります。もちろん、両方力を入れている医師もいます。
開業医の子息であれば、将来親のクリニックの継承を見据えて、病院で修行しているケースもあります。インターネットが発達したこともあり、大学病院や総合病院などは力を入れている科目とそうでない科目を分けて、以前より特色を持たせるようになりました。
特に都心部の病院が多い地域では、同じ医療圏にあるA総合病院では、消化器内科のチームがあり、B総合病院では、循環器内科のチームがあるなど住み分けをおこなっていることもあります。多くはありませんが、病院間でも連携していると紹介しあうケースもあります。
クリニックにかかるべきか、大学病院や総合病院にかかるべきかは、病気によります。いつも健康だった人が風邪をひいた、血圧が高いなどであれば、クリニックで問題ないでしょう。
逆に、大学病院や総合病院にかかるべきかどうかは、クリニックにはない設備の高度な精密検査が必要な場合や、入院が管理が必要な状態の場合になります。
出身大学を卒業して、医師国家試験に合格すると、自分の希望で日本全国の臨床研修指定病院に就職します。初期研修医は、出身大学の病院で研修する医師、出身大学以外の病院で研修する医師、大学病院以外の総合病院で研修する医師に分かれます。2年間の臨床研修後は、医師の自由選択になりますが、多くの医師は、大学の医局に所属します。
大学の医局であれば、大学付属病院だけでなく、多くの関連病院がありますので、最初は大学病院に勤務していても、人事異動で、関連病院の総合病院などに配属されます。通常、2、3年後には人事異動があり、他の総合病院に転属したり、大学病院に戻ったりします。
医局人事によるタイミング的なこともありますので、同じ医師でも大学病院であったり総合病院の医師であったり変わることもあります。
医局の人事では、特に出世したわけではないのに、大学病院では准教授だった医師が、総合病院に転勤になったら部長になったり、逆に、総合病院では課長だった医師が、大学病院では講師になったりすることもあります。
会社に当てはめてみると、病院長は社長、副院長は副社長、専務、常務で、教授が部長、准教授が副部長、講師が課長、助手が係長みたいなものです。大学病院の方が優秀な医師というイメージがありますが、そうとは限らないことがわかります。医局は教授や所属している医師の雰囲気によって異なりますが、外科系などはチームプレーということもあり、上下関係があって体育会系のノリがあるところが多いです。
逆に内科系などは個人プレーのことが多いので、文科系の雰囲気があります。この医師は外科っぽい、整形外科っぽいなど話していると感じることがあります。中には、医局に属さないで直接病院に就職するケースもありますが、その場合は基本的には転勤がほぼなく、他の病院には移らないわけです。医局に所属する医師と所属しない医師とでは、どちらの医師がよいと一概にはいえませんが、そのような医者の背景も理解しておくと良いかもしれません。
医局の人事制度があり、どの病院にどの医師を就業させるか、その科の主任教授が中心になって、次のポストを決めるので、権力を持っています。すべての医局がそうとは限りませんが、教授と関係が良くない医師は、待遇の良くない人気のない病院に飛ばされるなど、冷遇されることもあります。
逆に、可愛がっている部下には、准教授や講師などの重要ポストを任せることもあります。嫌がらせというよりは、やりやすさも影響しているでしょう。教授選があり、教授が変わると、多くの医師が医局を辞めたり、開業したりするわけです。人望がない教授だと、医局員が沢山辞めて話題になることもあります。
大学病院には関連病院があり、医局ごとに異なる場合もあります。A病院の循環器内科は、B大学病院の循環器内科の医局から、A病院の呼吸器内科は、C大学病院の呼吸器内科の医局からなどのこともあります。
医局人事で派遣されているわけですから、B大学病院の講師とA大学病院の課長であれば、B大学病院の講師の方が偉い医師と思うかもしれませんが、同じくらいの職位だったりします。そこらへんの仕組みを知っておくことが大事かもしれません。
朝6時に起きて、7時50分に病院到着。8時から診察開始して12時まで病棟での診察。昼ご飯を食べて休憩。13時から16時まで手術。16時から19時まで病棟での診察。18時に帰宅。
朝7時に起きて、8時50分にクリニック到着。9時から診察開始して12時まで外来の診察。昼ご飯を食べて休憩。14時から17時まで外来の診察。18時に帰宅。勤務医は、教授回診や勉強会などにも参加しますし、それ以外にも月数回、多い医師ですと、月10回当直をします。
上記はあくまでモデルケースになりますが、受け持ち患者さまの体調が悪化したときは、休みの日でも病院外にいるときでも、電話で看護師から相談の連絡があったり、病院へ駆けつけないと行けないこともあります。
受け持ち患者さまの状態は、当直の医師では判断できないことがあるためです。
開業医より勤務医の方が時間的にはハードといえます。開業医は、診療以外にも、看護師や医療事務を管理したり、従業員の給与や賃料などの経費のコントロールを経営したりする大変さがあります。
大学病院は、大学の教育機関としての側面もありますので、医学部生、看護学生、初期研修医、後期研修医が医学を学んでいます。採血や点滴などは、経験の浅い研修医や看護師がおこなうことが多い傾向にあるといえます。中には、技術を取得するために研修医や若手の医師が手術に入ることもあります。
基本的には、研修医には指導医がいて、診療方針を決めたり相談できたりしますが、やはり経験が少なく、指導医から判断を仰がず、治療方針の選択が間違っていることもかもしれません。中には、経験が少なく不安なため不必要に検査をし過ぎるケースもあります。
あまりないことでしょうが、指導医に相談しにくい状況で、研修医の判断のみで診療している場合は危険なこともあります。
治療法は進化していますが、最新の情報はネットを経由して医師へ入ります。そのため、デジタル世代の比較的若い医師の方が最新の治療については詳しい傾向にあります。
ネットの発達する前は、教科書や製薬会社の担当者からの情報提供、勉強会などで新しい治療法などを学んでいたわけですから、ネットの発達で、パソコンやスマホ経由で新しい情報が入りやすくなりました。
今時、パソコンが使えない医師はいないでしょうが、やはり若い医師の方がデジタルには強い傾向にあります。
毎年のように新しい情報に更新されている領域もあります。勉強しているかどうかは、最近発売された薬の名前や新しい治療法を聞いてみると、勉強しているかどうかわかります。
ガイドラインは毎年のように変更になることもありますので、さりげなく尋ねてみるのもいいかもしれません。学会に参加したり、製薬会社から情報提供してもらったり、自分でスマホやパソコンで調べる努力をしている可能性が高いです。もちろん、デジタル世代ではない高齢の医師でも、最新の治療について詳しい医師も沢山いますし、若い医師よりも多くの患者さまの診療経験がある利点もあります。
医療知識の乏しい人は、医者の善し悪しは表面上の会話ではわからないこともあります。そうすると、わかりやすいく説明してくれるか、親身になって話を聞いてくれるかなどで判断されがちになります。
例えば、美容室や理容室でも、その施術者の腕などはなかなかわからず、話しやすさや感じの良さなどで印象が大きく変わることがあるかと思います。同じ専門分野の医師からは、愛想がいいだけで、専門性が低く名医とは到底思えない医者でも、患者さまからしたら名医と思われている先生もいれば、逆に愛想はいまいちで、患者さまからしたら名医とはほど遠いけど、医師からは第一人者として評価されている医者もいます。
愛想がいい医者は名医とまではいかなくても、信頼されがちな傾向にあります。説明もわかりやすくて親身に話を聞いてくれれば、それは当たり前のことかもしれません。ただ、同じ専門分野の医師から第一人者として評価されている医師も、愛想がないせいで、評価されないこともあります。
担当の医師がその病気の専門家であれば、まずは信頼して診てもらうべきです。忙しい医師のことですから、愛想をよくしすぎると、質問を沢山されて、他の患者さまを待たせてしまうと考えている場合があります。
致し方ないのかもしれませんが、愛想がいまいちで、専門性が高い人の評価がどうして下がりがちなのがもったいないところではあります。第一印象が悪くても、二回目、三回目の印象は変わってくることもあります。人間の第一印象は強く残る傾向にあるので、一回目だけで決めすぎない方が良いです。
色々な医師を知っていますが、評判が悪い医師も、コミュニケーション力が足りないだけで、人間的には立派な人もいます。医師としては、専門性×人間性も大事といえます。科目にもよりますが、専門性だけが高く、人間性が欠落している医師や、人間性は大変良いが、専門性が全くない医師も信頼できません。
大学受験をして、医学部に合格し入学します。医学部は、国立でも私立でも難易度が高く、国立は東京大学の理系、私立は早稲田大学や慶応大学の理系くらいの難易度があり、多くは1浪や2浪して医学部に入学します。
1980年代くらいは、私立医学部は難易度が低く、学費さえ払えれば合格するのは難しくなかったかもしれませんが、1990年代から学費が下がり、優秀な高校生は医学部を目指すようになり、難易度が高くなりました。
医学部に入学後は、1年生から4年生までは毎年進級試験があり、5年生は病院実習で、6年生は卒業試験になります。6年生の最後に医師国家試験を受験します。
医師国家試験に合格したら、初期研修医として、臨床研修病院に2年間配属します。2年間の中で、内科、外科、小児科、産婦人科などを計1年以上、それ以外の科を計1年以上研修します。
2年間の初期研修が終わると、多くの医師は、大学医局に所属して、大学病院や総合病院に勤務します。その後、大学の医局に所属する医師、医局人事ではなく総合病院に就職する医師、独立開業する医師、クリニックに就職する医師などに分かれます。
大学病院や総合病院に継続して勤務すると、会社と同じように、大学病院の助手→講師→准教授→教授や総合病院の医長→部長など役職が変わります。
意外に知られていませんが、医局に所属する医師は転勤があります。医局の人事異動で2、3年に一度のペースで病院を移動になるケースもあるわけです。例えば、A大学病院に勤務していた医師が、A大学病院の関連病院のB総合病院に異動となり、逆にB総合病院に勤務していた医師がA大学病院に異動するなどです。
なんとなく、B総合病院よりも大学病院のA大学病院良い気がするかもしれませんが、働いている医師は同じくらいの実力のこともありますので、医局システムも理解しておくと良いかもしれません。
経験の浅い研修医に診られたくないのは、当たり前かもしれませんが、大学病院など大規模な病院ほど教育機関として研修医は配属されています。
ただし、大学病院では指導医の指示の下、初期研修医は医療をおこなっていますので、不安になりすぎる必要はありません。ちなみに、初期研修医と後期研修医は、医者から見るとかなり違いがあります。
初期研修医は色々な科を回って研鑽している段階でありますが、通常、後期研修医は自分の将来専門とする一つの科目を持続的に研鑽を積んでいます。大学病院の病棟にいる若い医師も様々な段階があるのです。
公的な病院サービスをいくつか紹介します。
救急車を呼んだほうがよいか迷った場合は救急相談センターへ。医療機関の案内や、応急手当のアドバイス等を行っています。下記の番号へお問い合せ下さい。
24時間年中無休
#7119(携帯電話、PHS、プッシュ回線から)
(ダイヤル回線からは)
23区:03-3212-2323
多摩地区:042-521-2323
〈 東京都医療機関案内サービス「ひまわり」のHPはこちら 〉
(休日の当番医・当番歯科医など、都内の医療機関に関する情報を掲載しています)
電話(係員が音声で対応します)による救急病院案内サービス(東京消防庁の各消防署一覧)
東京民間救急コールセンターでは、車椅子や寝台つき車両、タクシーなどの案内を行っています。詳しくは、下記の番号へお問い合せ下さい。
ナビダイヤルオーミンキュウオーキュウキュウ
0570-039-099
※PHS等一部の通信機器からは、つながらない場合があります。